面白うてやがて笑えぬプロパガンダ映画/ヒトラーとA・ネフスキー
そういえば宮崎駿先生が『妄想ノート/泥まみれの虎』でおすすめしていたロシア映画アレクサンドル・ネフスキーも見た。渋谷のツタヤで聞いたらあった。んで、最後の
「われらの国に攻めてくる奴は必ず滅ぼされ、死の運命に追い落とされるであろう!!」
って、ぶっとい字幕+カメラを睨みつける民衆のカットで終わるのだけれど、話がすでにそういう話(チュートンのドイツ騎士団を撃退し、湖の氷が割れて悪者皆溺死)なのに、わざわざもう一回大声で言うくどさが、1938年製作だな*1ってかんじで受けた。それでもってこの映画は
でもって『ヒトラー(Der Untergang)』の最後の、主人公である総統秘書のおばちゃん本人が
「私には責任がなかったと思っていたが、年を取って、考えてみるに、あのとき自分たちが何をやっているのか、見ようとすれば見えたはずだとわかったのです。見ようとすれば見えたはずなのです」
って台詞を言わせて終わる。これ同じプロパガンダ手法だなと思ってまた感慨深かった。最後にくどくもう一回、ベタベタにわかりやすい言葉を貼り付けて締める。本編であれだけ力強い演出のかぎりを尽くしても、それでもまだ不安なんだろうな。かわいらしい話だ。
*1 1938年製作
ナチスは結成以来ずっと共産党と激しく戦い、政権を取った1933年の国会議事堂放火事件以降これを非合法化、弾圧したので、ソ連とは当然ばりばりに緊張関係にあった。その情勢下の被害妄想というか妄想じゃなくて的確な、危機意識のもとに、「残虐非道なドイツ騎兵が攻めてくるが強力な指導者に率いられた平民男女がこれを撃退する」というアレクサンドル・ネフスキーが作られた。わけだ、が、しかしなぜか1939年8月23日に独ソ不可侵条約が結ばれ、即9月1日両国は東西からポーランドへ侵攻し分割、いわば一夜にしてソ連の対独政策は宥和に転換した。これは世界の軍事バランスをゆるがす大変動で、当時やはり満州でソ連と激しくやりあっていた日本もたいへんにびびり、内閣が総辞職している。そういう転換のわけで本作品がひとまず日陰物になるのだが、結局ドイツは2年後1941年6月、条約を破って不意打ちをしかけ、二大大国の死闘が始まる。
伊藤「なるほどナウシカへの影響いちじるしいですね」
F橋さん「あのさ、青き衣の者って、ネフスキー?」
一同「げえ」
※画像こんなかんじ 立派な御髭 わしの老いた目にはもはや見えぬが…
今回のgoogle
エイゼンシュテイン式ネフスキー
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