じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

別れの季節

このところ、日ごとに春めいてくるのを感じます。春の訪れはうれしいことですが、3月は別れの季節でもありますね。昨日は高校の後輩2人の送別会に行ってきました。一人は新天地で就職を、もう一人は故郷に戻るため東京を離れるとのこと。別れを惜しみつつ、それぞれの新しいスタートを祝福しました。

今日は、この3月で東京芸術大学の教授を「卒業」される生田流箏曲の安藤政輝さんの「退任記念演奏会」に行ってきました。一般の大学なら退任記念最終講義となるところでしょうが、芸大の奏楽堂が満員となる盛大なお別れの演奏会となりました。
プログラムはすべて宮城道雄の作品で、次のとおりです。

「安藤政輝 退任記念演奏会」
1.道灌(どうかん) 栗原廣太 作詞 宮城道雄 作曲
2.編曲松竹梅  三津橋勾当 作曲 宮城道雄 編曲
3.壱越調(いちこつちょう)箏協奏曲 宮城道雄/下総皖一 作曲
  第1楽章 序曲 第2楽章 歌謡調 第3楽章 さらし風終曲
東京藝術大学奏楽堂 2012年3月18日(日)15時開演)

「道灌」は邦楽器による合唱合奏曲で、安藤さんが箏独奏部を演奏しました。箏、十七弦、三弦、胡弓、尺八、笛、笙、打物という編成で、邦楽科の非常勤講師、教育研究助手、卒業生、在校生など80名近くによる大合奏+大合唱でした。うちのブログスタッフのうなぎさんも、卒業生の一員としてお箏で参加していました!
「道灌」は江戸城を築城した室町時代の武将、太田道灌のことで、昭和11年、当時の東京市が主催した「太田道灌四百五十年祭」の記念曲として発表されたそうです。とても華やかな曲でした。
2曲目の「編曲松竹梅」は古典の「松竹梅」を宮城道雄が編曲したもので、箏、十七弦、三弦、胡弓、鼓、笛、尺八という編成。名誉教授の山本邦山さん、やはり今年で教授を退任される邦楽囃子の三浦正義(望月太喜雄)さんと、非常勤講師の方々9名の助演という錚々たるメンバーによる合奏でした。
そして最後は箏独奏とオーケストラのための「壱越調箏協奏曲」。あまり聴く機会のない曲ですが、昭和12年、芸大の前身である東京音楽学校の校長に委嘱された作品とのこと。芸大の学生有志オーケストラをバックに安藤さんが独奏されました。こういう作品が演奏できるのも、芸大ならではですね。
大きな拍手に応えてのアンコールは「春の海」でした。「壱越調箏協奏曲」でオーケストラの指揮をした澤和樹さんがヴァイオリンをかかえて登場。もともとヴァイオリニストでいらしたんですね! ヴァイオリンの伸びやかな音色とお箏の息のあったていねいな演奏で、退任記念演奏会の名残を惜しむのにふさわしく、しばらく余韻にひたりました。



「道灌」と「編曲松竹梅」は、当財団から発行しているCD5枚組『宮城道雄合奏曲集成』に収録されています。

当財団から発行している、安藤政輝さんのご出演されているCD、DVDはこちらです。→

(Y)