パブリックコメント手続を経なかったものの効力はどうなる?

 この問題に関しては,実は,次の書籍に設問としてとりあげられています(なので,全国の多くの法科大学院生は,それぞれに解答を用意しているはず。)。

ケースブック行政法 (弘文堂ケースブックシリーズ)(第2版・2004年)

■第1章 行政立法と条例 第7問 ★★★*1
 パブリック・コメント手続を経ることが求められている行政立法が、同手続を経ずに制定された場合、あるいは、その手続に瑕疵があった場合、その違法を訴訟で争うとして、どのような主張をすべきであろうか。

 一応,私的な解答案のようなもの。あくまで私的な解答案のようなものにしか過ぎず,全くの個人的見解を少なからず含めていますので,ご注意を。
 パブリック・コメント手続は,現状においては,あくまで意見公募手続であって,意見を提出する権利,提出した意見内容を原案に反映してもらう権利などといったものまでは認められていないと考えられる。したがって,「手続に瑕疵があったとしても,それが,(いわゆる)『重大な瑕疵』でない限りは,当該行政立法は有効である」と解され,たとえば,特に何らかの権利を侵害したということを理由として,訴えを提起することはできないのではないか。ただし,「同手続をとらなかった職員については,職務義務違反で責任を問いうる」ことは考えられうる。
 なお,仮に,パブリック・コメント手続に関して,その目的を「(1) 利害関係人が,その権利を不当な行政立法から防御するため」とした場合においては,手続違背によって策定された行政命令に基づき,個別具体的な個人の権利が侵害されるおそれもあり,そうした権利侵害を防御する正当な機会も奪われたとして,訴えを提起することが可能ではないか。
 また,その目的を「(2) 国民一般が,行政の意思決定過程に民主主義的コントロールを及ぼすべく参加するため」とした場合においては,手続違背によって,意見・情報提出権という命令等制定過程参加権が侵害されたとして,訴えを提起することも考えうるのではないか。

*1:設問の難易度を示すもの。「最も難しい」との度合いです。