君が代は千代に八千代に (文春文庫)(高橋源一郎/文春文庫)★★★★★

君が代は千代に八千代に (文春文庫)
こないだ読んだ『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』が面白かったので、次に挑戦。そういえば最近出た『文藝』も高橋源一郎特集だったので、とりあえず買っておいた。まだじっくりとは読んでないけど、波瀾万丈な人生を歩んでこられたようですね。

で本作はというと、欲望に振り回される人間たちを、滑稽にかつクールに描いた短編集。面白かったですよ〜。一方ではチョーウケるけど、一方では眉をしかめられそうなジョークのようで。一歩手前で引いたようなラストもいいし。
一番好きなのは表題作かな。しがないタクシー運転手が連れて行かれたのは、ヒトラーガンジーはじめ歴史上の重要人物が集まった教室で……!? これがジョーク効いてて楽しいことこの上ない。主人公の名前が<ハル>っていうのもいいね。それから「殺しのライセンス」も好き。『ビューティフルライフ』の最終回で涙しちゃう殺し屋の物語。このラストシーンは格好いい。同じくラストが格好いいのは「素数」かな。少年鑑別所で出会った、素数を愛する少年の物語。ちなみに著者による解説では「素数を扱ったあるベストセラー小説が出る前に書いたのです」と強調されてます。

この他も楽しい作品ばかり。この人の作品は全部読みたいなぁ。

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)(米澤穂信/創元推理文庫)★★★★

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)
米澤穂信、初挑戦です。この本は前々から気になってたんだけど、今月この続編が出たらしく、二冊とも平台に並べてあったので両方購入。

小鳩君と小山内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って来よく慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面して目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たして小市民の星を掴み取ることが出来るのか?

ラノベ風味な本格ミステリですね。物語が進むにつれ引き込まれてしまいました。キャラに愛着が持てるし。とくに小山内さんの<裏の顔>をじっくり知りたいもんです。続編に期待。

無限の網――草間彌生自伝(草間彌生/作品社)★★★★★

無限の網――草間彌生自伝
ほんっとうにアートとかに弱いもんで、この人の名前もうっすら聞いたことがあるような…ていうかんじだったんですよ。どういう人なのかどういう作品を書いてる人なのかも知らず。なのにこの本を手に取ったのは、金原瑞人氏による『12歳からの読書案内』で紹介されていたの読んで気になっていたからだ。でも行きつけの本屋になかったのでしばらく忘れていたんだけども……。
たまたま先日、ヴィレッジヴァンガードで発見。隣に版画集が置いてあってパラパラ見てみたらこれまた好みなのでそちらも購入してしまいました。

強迫神経症に苛まれながら、50年代後半に単身アメリカに渡り、ダリやウォホール等との交流の下にハプニングの女王として一世を風靡。今も前衛として世界に発信する比類なき才能の奇跡。

この自伝、恐ろしいくらいにパワフルです。
長野の旧家に生まれ、保守的な母親と取っ組み合いになろうとも絵を描くことを止めず、フランスに行きたいと思えばフランスの大統領に手紙を書いてしまう(しかも返事をもらってる!)その情熱。まだまだ海外渡航が厳しかった時代、アメリカでの身元引き受け人をツテで探し出し、制限を超えるドルを靴の中に隠して単身アメリカに渡ってしまう、そのパワー。あこがれのニューヨークで、寒さと飢えに苦しみながらも狂ったように作品に向かう、その強さ。
立ち止まることを恐れるかのように、彼女は突き進む。知名度がどれだけ上がっても、彼女の中にある創作への欲望は尽きることはない。<前衛>に取り憑かれたような彼女の人生のスピードは圧倒的で、読んでるコチラが生気を吸い取られそうなほど。そしてページをめくる手は止まらないのだ。
こんな人がいるのかと、ショックに打たれること間違いなしです。


ちなみに一緒に買った版画集はコチラ↓
草間彌生全版画集 All prints of KUSAMA YAYOI 1979-2004
もともとドットは好きなんで、超好み。かぼちゃもいいけど、ぶどうが好きだな。