第135回芥川賞・直木賞候補が決定
もうそんな季節ですか。
【芥川賞】
▽伊藤たかみ「八月の路上に捨てる」(文学界6月号)
▽鹿島田真希「ナンバーワン・コンストラクション」(新潮1月号)
▽島本理生「大きな熊が来る前に、おやすみ。」(同)
▽中原昌也「点滅……」(同2月号)
▽本谷有希子「生きてるだけで、愛。」(同6月号)
【直木賞】
▽伊坂幸太郎「砂漠」(実業之日本社)
▽宇月原晴明「安徳天皇漂海記」(中央公論新社)
▽古処誠二「遮断」(新潮社)
▽貫井徳郎「愚行録」(東京創元社)
▽三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」(文芸春秋)
▽森絵都「風に舞いあがるビニールシート」(同)
今回はあんまり興味ないなぁ。芥川賞は島本理生以外読んだことないし。中原昌也の作品は読んでみたいけど。しかし知らないけど本谷有希子さんの「生きてるだけで、愛。」ってタイトルはどうにかならなかったのか。自己啓発本? あ、でもそれを皮肉ってるような中身だったら読みたいかも。
直木賞もパッとしないなぁ。やっぱ本屋大賞寄りのラインナップで。伊坂幸太郎の「砂漠」は個人的には好きじゃなかったけど、まわりの評価は高いようなのであるかもしれませんねぇ。森絵都のはまだ読んでないけど面白そうだな。文芸春秋だしあるかも? 三浦しをんはないだろうな。個人的に「まほろ駅〜」は大好きだけどね。あとの作品は賞を獲っても多分読まない気がする。
メッタ斬りコンビの大本命は森絵都、古処誠二みたいですね〜
http://www.nikkeibp.co.jp/style/life/topic/literaryawards/060703_1st/
配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)(大崎梢)★★★★
- 作者: 大崎梢
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/05/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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暗号のような探求本リストは何を示すのか? 『あさきゆめみし』購入後に消息を絶った常連客の行方は? 配達したばかりの雑誌になぜ盗撮写真が? 書店員じゃない書店員のオススメ作品とは? 力作ディスプレイを壊した犯人は? ……駅ビルにある書店・成風堂で起こる不思議な事件の謎に、ベテラン書店員・杏子とアルバイト店員・多絵が挑む!
正直、一番はじめに収録されてる「パンダは囁く」はちょっとあり得ない気がしてどうなのかしらと思ったものの、だんだんのめり込んで読んだ。かなり好感度が高い。主人公をはじめとする登場人物たちのくったくのない柔らかな視点。そして何よりも<本>への愛情の詰まったエピソード。共感するなってほうが無理な話ですよ。それにこれが一作目とは思えないほどに、文章とかも落ち着きがあるしね。
そして書店員さんとか書店でバイトしてた人とかにとってはめちゃめちゃ楽しめるんじゃないかと思う。タイトルも著者名もわからない本を探しにくるお客さんの話とか、平台の並べ方とか、どれだけたくさんの種類の本や雑誌が毎日入荷されてくるかとか、自分たちの販促によって本が売れてくれる喜びとか、リアリティと愛情に満ちあふれていて。書店で働いたことはないけど、リアル書店をこよなく愛するわたしも楽しめました。
でもそういえばわたしはあまり書店員さんに話しかけることはないな。どうしても今買いたい本があるべき場所にない場合だけ、在庫があるかないか聞いてみることはあるけど。行きつけの本屋の小説コーナーに限って言えば、入社一年目の書店員より把握してる気すらするし。ただカタカナに弱いので、翻訳モノの文庫に関してはときどき著者名がわからずに右往左往する時がある。でもその探してる本っていうのも他の人たちのブログを読んで興味を持ったものが多いので、書影が頭に入ってるんですね。で、アマゾンの書影は帯が入ってることが多いので、帯によって出版社がわかる。ついでにファーストネームがなんの行だったかでもかすかに覚えていれば、大体は見つけられるわけです。あ、でも漫画はときどき聞いてるな。タイトルしか知らない状態で探したりするんで。少女漫画なら絶対わかるんだけど、少年や青年向けコミックとかだと掲載誌がわからないのでお手上げ。でもいつでもささっと教えてくれるし、その店員さんがわからなければ小走りで他の店員さんに聞きにいってくれる。行きつけの本屋は、店員さんも品揃えも入荷の早さもとても大好きです。
少女七竈と七人の可愛そうな大人(桜庭一樹)★★★★☆
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
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母がいんらんだと娘は美しく生まれるものだとばかげた仮説を唱えたのは親友の雪風だが、しかし遺憾ながらそれは当たらずとも遠からずなのである。わたしは母のいんたんのせいで非常に肩身のせまい少女時代を余儀なくされている。男たちはわたしの顔を、からだをじろじろと眺めまわす。母から継がれたなにかがしらず流れだしているのを感じて、わたしは身をすくめる。おとなの男たちからじろじろと眺めまわされるたびにわたしは怒りをかんじる。母に。世界に。
男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの嵐。
辻斬りのように、短期間で七人の男と交わった母から生まれた少女、七竃。平凡な容姿の母とは較べることができないほどの美貌を持った少女は、小さな町の中では<異形>だった。そして同じく<異形>である美少年・雪風と親友になるが……。幻想的な風景の真下でうごめく男と女の生の感情を描いた、切なすぎる物語。
確認し合うための暗号めいた会話、他人行儀な話し言葉、あまりにも似た美少女と美少年、という幻想。あまりの本気ゆえに破滅に向かわせた恋、死をもっても生をもっても埋められぬ嫉妬、許せなくてもその愛情を求めてやまない子の心、という生々しい感情。その対比で揺れるこの物語の世界に、ひたすら酔う。酔って酔って酔いまくる。しかしラストはその対比の構図を崩して、登場人物たちを飛躍させる。そこを甘いと思うかどうかは読者の手にゆだねられていると思う。わたし自身、<異形>で突っ走ってくれた方がインパクトはあったように思えて惜しいなと感じたけど、でも切なくも前を向けるこのラストは桜庭一樹らしく、それがいいとも思えるのだ。
それにしてもこのカバーイラストは素敵です。さやかさんという人が描かれた絵のようですが、小説のイメージにぴったり。読み終えて、改めてじっくり見返してしまいます。