k-takahashi's blog

個人雑記用

99%

 検査は妊娠10週目以降から可能で、妊婦の血液中に含まれるわずかな胎児のDNA型を調べ、99%の精度で異常が分かるという。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120829/bdy12082911260002-n1.htm

胎児にダウン症などの染色体異常があるかどうかの診断が、来月から始まるという記事。


この検査の倫理的な位置づけには微妙なものがあり、遺伝疾患を持つ子供をもうけるべきか、避けるべきかどうかということにつながる。サンデル教授の著書*1にもちょっと触れられていた


実はもう一つ微妙な問題がある。
この検査をして「異常と判定された」とする。それを「この子は99%の確率でダウン症だ」と誤解する人が多くいそうだが、それは間違っている。
仮にダウン症の発生率が0.1%だとする。すると

%だと直観的に分かりにくいので100万人を診断したとする(ざっくり日本の1年分に相当)と、それぞれ990人、10人、98万9010人、9990人、となる。
「異常と判定」されるのは最初と最後で1万0980人。その中で本当にダウン症なのは990人だから、異常と判定されたときに本当に異常なのは990/10980 で約9%。つまり、約1万人が誤診ということになる。(条件付き確率が直感に反するのはモンティ・ホール問題でもよく知られているとおり。)


9%なり9割なり(具体的な数字は発症率によって変わってくる。だから、発症率の高い人たちが主な検査の対象となる。)という数字をどう受け取るかは各人の人生観によるもので、それは様々だろう。ダウン症の子供が生まれてくる数を下げることと、ダウン症でない子供の望ましからざる中絶数を下げることとどちらが優先されるかというのは簡単に解ける問題ではない。社会全体としてどうか、個々人としてどうか、というのも難しい。
願わくば、数字の意味を正しく理解した上での判断であってほしい。放射能やワクチン、食品添加物などに対して科学を無視し、誤解と偏見に満ちた反応をする人が少なくないだけに心配。

*1:

完全な人間を目指さなくてもよい理由?遺伝子操作とエンハンスメントの倫理?

完全な人間を目指さなくてもよい理由?遺伝子操作とエンハンスメントの倫理?