新球団の船出だが@BCリーグ 福島x武蔵

福島 2 - 6 武蔵
4/18 熊谷運動公園野球場 観衆1,058人

プロ野球の新球団ができてその本拠地開幕戦に立ち会う。こんなことは一生のなかでもそうは多くあるまい。鉄道開通の一番列車に乗ることにも似ている。僕はそういった経験は一度もない。
BCリーグで2番目の関東のチーム、武蔵ヒートベアーズの本拠地開幕戦には、マイナー野球好き人間としてはどうしても立ち会わなければならない、そんな気持ちで熊谷市までやってきた。空は快晴、気温は20度。晴れの舞台にこれ以上の好条件を望むのは酷だ。

熊谷駅から4駅の「ひろせ野鳥の森」駅から歩いて20分。熊谷運動公園につくといきなり駐車場にこんなゴミ収集車が停まっていて軽く驚く。さらに球場に着くと、あのレッドブルカーが。おまけに松屋が出店を出している。この華やかさは開幕戦ならではか。地元の出店の多いBCリーグには珍しい。


去年ちょっとだけ首都大学野球を見た熊谷運動公園の野球場。観衆2万5千人収容というのはウソで、どう見ても1万も入らない。おまけに内野スタンドもわりかしコンパクトなのだが、その内野スタンドはほぼ埋まっていた。さすがにきょうはよく入っているか。
熊谷市長のあいさつに続いて、なんとあの村田兆治氏が登場し、武蔵の応援部長?のパンチ佐藤と1打席対決を繰り広げる。結果はフォークボールに三振。初めて見たが、現役と混じっても全く違和感がない球だ。


新球団の地元開幕戦の相手は、これも新球団の福島。同じ境遇のチーム同士だが、チームの勢いでは明暗が分かれた。
初回こそ、福島が岡下の大飛球で先制するも、武蔵はその裏すぐにヒットで同点に追いつき、2回には逆転。福島は守備がどうもいけない。エラー2つがからんでこの回3失点し1−4とリードされる。
福島はエラーもあったが、それより打線が全く元気ない。武蔵の先発・中村一仁(藤嶺藤沢―帝京大)の左腕から繰り出す球に翻弄され、ゼロ行進が続く。

熊谷の内野スタンドはほとんどが地元・武蔵のファン。3塁側スタンドに応援団が10人ほどいる(ここでは3塁側がホームになっている)。応援団はかなり慣れた様子で、リーダーもよく声が通る。おそらくNPB球団で応援団の経験があると感じさせた。たしか群馬の応援団はもともとロッテを応援していた人達だったと記憶する。
しかしながら、応援団の元気に比してスタンドの観客はおとなしい。いつものBCリーグとは様子がだいぶ違う。信濃や群馬のスタンドでみられる、熱い(汚いとも言う)ヤジが、ここでは全く聞かれない。
これはおそらく県民性の違いというより、まだ武蔵ヒートベアーズに「熱狂的なファン」がいないからだと思う。チーム自体もまだ完全に「チーム」になっていないだけでなく、球団スタッフも観客も、まだ新球団のそれという感じがする。やる方だけでなく、支える方も、そして見る方もまた、地元のプロ野球というものを手探りで扱っているようだ。

途中、ビールを持って外野の芝生席に行く。暑すぎず寒すぎず、大変快適な観戦環境なのだが、周りを見ると、客があんまりいない。内野スタンドは埋まっているが外野がまばら。こんなに快適に、のんびりと野球がみられるのだが。
福島、見せ場がつくれない。地元の試合でなくてよかったと思う。地元福島の観客の前でこんなに打てない試合を見せてしまったらさすがにまずい。
9回、福島はようやく貴規(仙台育英―ヤクルト)がセンターオーバーの意地の三塁打を放ち、内野ゴロの間に1点返すも、そこまでで終わる。選手交代を告げる岩村明憲・兼任監督の足取りも重いのがわかる。岩村監督含め、コーチもいずれも指導者経験は初めてと記憶する。新球団の船出から勝ち星がない状況、ちょっと荷が重いのではないか・・


心配といえばもうひとつ。9回に本日の観客数の発表があったのだが、「1058人」と聞いた僕は「えっ??」と耳を疑った。ちょっと待ってくれ。
最初に書いたとおり、この日はこれ以上ない野球観戦日和。そして新球団の船出。それでこの数字か。僕の予想の半分もいってない。
武蔵は安田権守(早稲田実―TOKYO METS―群馬)に角晃多東海大相模)をそろえた打線に魅力があるし、この日は守備も悪くなかった。チームはそこそこイイ線をいっていると思うのだが、客がこれでは、福島とまた違った意味で心配だ。

「カンドクの二の舞か」なんて思いたくはないが、BCリーグとしては初めて、NPB球団がある県に進出したケースである。リーグの他県のように「県民球団」の意識を持たせることができるだろうか。