森橋ビンゴ 『pulp III』 (ファミ通文庫)

pulpIII (ファミ通文庫)

pulpIII (ファミ通文庫)

あの最後,「最も陳腐であろうと思われる」最後の数ページにこそ作者の本当に言いたいことがあるんじゃないかしら.と思いながら読み終え,続けてあとがきを読んだらそんな意味のことがズバリ書かれていた.やられたーと思った.掌で踊らされていた.
で考えた.例えばくっさい青年の主張とか偽善偽悪にカテゴライズされそうな思想,便宜的に等級付けするならC級D級の陳腐な思想に,高級そうな皮を被せて体裁を繕っている物語が多いよね,ラノベって.んでも作者の技量とかの問題で失敗作が産まれることはけっこう多い(もちろん成功例も沢山ある).「中身」と「皮」のバランスがとれていないというか,歪んだ果実みたいな.
この作品は「ありふれた思想」を「どっかで見たようなB級」で包んでいる.麻薬や銃や復讐や血で主張(ネタバレになるだろうから書かない)を包んでいる.調和がとれている.それでいて,うまく説明できないんだけどどっかしら新鮮な部分もある.このプラスαをどうやって引き出すかが,技術の差なんだろうなぁ.ただ「中身」と「皮」を提示されていただけだったらポイしていたかもしれない.壇上でかっこつけて叫ぶだけでは主張は届かない,くだらないことをテクニックでどう伝えればいいのか,って話.言語化できない時点で私には語る資格が無いかもしれんけど.ディベートとか苦手だし.