新典礼について極私的感想

カトリックのミサについて、経験も知識もない私が何かを言う資格も権利もないことはよくわかっている。したがって、ただ感想を述べておきたい。

「手による聖体拝領」最初、それを耳にした時、私は何かの冗談だと思った。次にそれが事実あることを知った時、私は例外的な現象だろうと思った。それがほとんどの教会で成されていることを知った時、私は言葉を失った。
私は静かに心の中でうめいた。「それは御聖体に対する冒瀆、ひいては全実体変化の教義の否定にならないだろうか?」
それでも信徒でない私は、大声をあげるつもりはない。静かに、悲しみとともに、それがなぜ生じたのかを探求するのみである。

「英国聖公会の叙階の無効性」について(続続)

杉本氏の発言は青字で引く)

明快な反論があるだろうと期待していたら、早速杉本氏からコメントがあった。
http://d.hatena.ne.jp/kanedaitsuki/edit?date=20070216

最も重要な点は、バチカンと、ルフェーブルや聖ピオ10世会の人たちとでは、形式上の意味ではなく、実質上の意味において、用語の定義、使い方、意味のこめ方が全く異なっているということ。「異端」、「破門」、「無効」など全ての言葉に当てはまり、それゆえ、私はバチカンの言っている意味と、彼らの解釈とはずれている、と申し上げているのです。教条、教理の厳密な解釈論をしているつもりがないのに、貴殿がどんどんそういう赤ペン先生のような添削をなさっているのは、貴殿がそういう意味でたいへん博学だと感心はいたしますが、どんどん私との議論はかみ合わなくなります。

教条、教理の厳密な解釈論をしているつもりがない」というのは不思議な応答で、私も「教条、教理の厳密な解釈論をしているつもり」はないし、実際にしていない。もちろん私が「博学」であるという事実もない。

私の杉本氏への希望は、
バチカンと、ルフェーブルや聖ピオ10世会の人たちとでは、形式上の意味ではなく、実質上の意味において、用語の定義、使い方、意味のこめ方が全く異なっている」点
バチカンの言っている意味と、彼らの解釈とはずれている」点
を、具体的に提示してほしいということだ(実際にそうするためには、たとえ厳密ではないにしても、一定の「教条、教理の解釈」は必要にはなる)。
今までのところ「教皇不可謬権」「教会の外に救いなし」「英国聖公会の叙階の無効性」に関しては発見できなかったので、その他の点で一例でもよいので是非ともお願いしたい。

たとえば
「第二バチカン公会議」「エキュメニズム」「聖伝ミサ」
に関して、ローマと聖ピオ十世会には「実質上でも形式上でも」差異があることは確かである。しかし、まず「第二バチカン公会議」については、具体的に公文書中のどれについて、またどのような意味・範囲で違いがあるのかを限定しなければ、漠然と「肯定しているか」「否定しているか」という話にしかならない。そのような曖昧な論議は杉本氏の望むところではないだろう。
エキュメニズム」についても、同様のことがいえ、実際にその何が批判されているのかが明快にならない限り、聖ピオ十世会の批判の是非は(ただ単にそれを否定しているという事実だけでは)わからない。
「聖伝ミサ」については、不可謬的でない部分と不可謬的な部分を区別する必要がある。ミサに関する不可謬的な教義の部分(たとえば「全実体変化」)について、両者に違いはない。不可謬的でない部分(つまり可変的な部分)については対立がたしかにあるが、ここで私が問題にしているのは不可謬的もしくはそれに準じる教義の部分なので論議外の事柄に過ぎない(もちろん、それとは別に議論の対象とすることは可能だし、実際にそうする予定ではある)。

<追記>

杉本発言でちと気になったのが、バチカンと聖ピオ十世会と「実質上の意味での違い」に関して、
「異端」、「破門」、「無効」など全ての言葉に当てはまり
という部分。やはりここでも具体例がぜんぜんないので、本来議論のしようがないが、たとえば、彼らはなるほどバチカンが「破門」としている六人(それ以外が破門されていないことはバチカンも認めている)について、「破門されていない」と主張している(CIC(新教会法)canon1323およびcanon1324により)。ところで、この点で言葉の「実質上の意味での違い」て何だ? 意味は同じだが、立場が違うてだけやん。つまり教会法の適用(そういう意味での「解釈」)に関しての差異であって、厳密な語義解釈のレベルでの解釈ではない。しかも「破門」という判断は、不可謬性の対象ではない(つまりバチカンの決定が誤りである可能性がある)から、聖ピオ十世会がそれについて異議申し立てをするのは教会法上も許されているカトリック教徒の権利である。
「異端」についてはCCC 2089およびCIC(新教会法)canon751ご参照のほどを(バチカンサイトで閲覧可能)。
「無効」については、「英国聖公会の叙階の無効性」はバチカンも認めている(Apostolicae Curae)ことを確認した。また、聖ピオ十世会の司祭(破門された司教らも含む)の叙階が有効なことはバチカンも認めていることを確認した。
http://d.hatena.ne.jp/kanedaitsuki/20070208