和田誠さんと俳句

五・七・五交遊録

和田誠さんの新著『五・七・五交遊録』*1白水社)を読み終えた。俳句をとおして語る半自伝、俳句をとおしての交遊を綴る、いつものように淡々として暖かみにあふれるエッセイ集だった。「話の特集句会」に集うデザイナー、イラストレーター仲間、作家、編集者、音楽家、俳優、その他様々なジャンルの一流の人びとのポルトレが、和田さんが仲間のために詠んだ句とともに淡彩で描かれる。色川武大寺山修司あたりのエピソードがいい。
仲間のために和田さんが詠んだ句というのは、自身の句集『白い嘘』*2(梧葉出版)が出たとき、本に添えられた献呈句なのだという。その句とともに、一人一人の横顔と、思い出が語られる。
昨年出た、和田さんと歌人笹公人さんとの連句集『連句遊戯』*3白水社)は、買って読んだけれども、結局感想を書く機会はなかった。この本と今回の『五・七・五交遊録』は装幀の雰囲気もわざと似通わせている。隣に並べるといい感じである。
先の句集『白い嘘』のことも思い出す。七年前の夏、郷里のブックオフで入手したのだった(→2004/8/15条)。和田さんの句集があるなんて知らなかったから、驚きつつも嬉しかったなあ。ブックオフの詩歌集・句集コーナーも探せば玉があるものだと、それ以来チェックを怠らなくなった。
和田さんが装幀を担当した丸谷さんの句集『七十句』*4(これも『五・七・五交遊録』で触れられている)をその直前に入手していた嬉しさも手伝い、自分が詠んだ句を披露までしている。
いま『五・七・五交遊録』を読んで、あらためて『白い嘘』を書棚から取りだしてみると、ここで披露した俳句を記したメモ用紙が挟みこまれていた。そこには三句記されている。七年前に載せなかった遺漏の句は、こんなものだ。
 ひ も と け ば 句 集 の 余 白 に 秋 来 る
嘱目や感じたことを五七五の定型にあてはめようとする頭の働きを忘れてからしばらく経つ。少しずつ、リハビリのようにこうした余裕を取り戻していきたいものである。