PS3への批判に対する反駁 (2006.09)

PS3のコンセプトは、今となってみると成功した部分もあり失敗した部分もあり。
計算機やコンピュータとしての機能はほぼなくなってしまったな。
blu-RayHD-DVDの争いは醜かった。
当時「PS3blu-Ray載せるから高いんだ!DVDで十分だ!」と言っていた人は息してるんだろうか。


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はっきり言って長いです…あらためて自分でも見返すと読む気をなくします。先日の話でのPS3が高い高いと非難轟々というのを説明したものなので、興味のある方だけどうぞ。

題名のように言いつつもいきなり批判から入ってしまうと、PS3は言ってみれば論理のすり替えで売り出そうとしている商品だと思えます。
どういうことかというと、SCEIがゲーム機としての発売台数を見込んで販売戦略を練っているにもかかわらず、「これはゲーム機ではない、エンタテイメント用のサーバなのです」とまるで違うジャンルの製品であるかのように言っている点がそれにあたります。
もう一点批判をあげると、エンタテイメント機と言いながらもゲーム以外の具体的な使い方をこれまでまったく提示していないことです。他社からの模倣を防ぐためにあえて具体化してこなかったのかもしれませんが、発売の2ヶ月前になっても分からないのはいくらなんでも遅すぎるように感じます。もしかすると今週末に行われる東京ゲームショウで公表されるのかもしれないのですが、この時点でも使いたい!と消費者に思わせるようなアドバンテージを主張できなければこれはあくまでもマニア用の製品になってしまうでしょう。なぜならコンセプトは当然製品の開発初期に考案されるもので、使い方の点でエンタテイメント性を示せないということは、PS3のコンセプトはハイスペックのハードウェア生産を合理的に行う、という事になってしまうからです。その点Wiiは最大限にコンセプトとマシンを一体化させ、なおかつそのマスコミへのパフォーマンスによって大いに評価されています。コントローラを振ればラケットにも剣になり、それを使って楽しそうに遊んでるのを見れば、誰がやってみたいと思わないことがあるでしょうか。
上記のような目的と実際の乖離についての批評は多分あまり見たことがないので、この機会に言っておきたいと思います。

さて話はうって変わって、一般的な批判に対する僕なりの反駁をしたいと思います。大きくは価格について、そのサブトピックとしてblu-Ray Disk(誤字じゃないですよ)について。そこに一般ユーザの批判が集中しているようなので。

はっきり言って、PS3に対する失望は価格、この一点に尽きます。これさえ無ければ、たとえば3万5千くらいなら、あくまで予想でしかないですが大方次世代の勝者と見られていたでしょう。なんせPS3にはPS2のソフト群という莫大な遺産相続があるからです。もしかするとWiiがちょっとしたイロモノ扱いで終わることもあり得たと思います。それは先日のWii製品発表会で岩田社長自身が「DSの普及がWiiの普及を保証するものではない」と言っている通り、気軽にできる持ち運び可能な個人用の携帯ゲーム機と違い、リビングなり部屋なりでやることになる据え置き型ではさまざまな要素がからみあっていてセールスポイントを絞ることができないからです。どちらかと言えば、PS3がこの価格においてもある程度は売れそうだ、ということが恐ろしいと思います。PS3(20GB)一台でWii2台+ソフト1〜2本は買えてしまう値段である。それだけPS3が期待されていたのだと考えるのですがいかがでしょう。
しかし、PS3が無駄に高いというのは間違っていると僕は思います。現在のパソコンはディスプレイまで一体で含まれているので正確な値段をはじきだすことが難しいですが、どんな安くても最新に近いスペックで選んだなら7万から、といったところになります。それも世界中で使われているDOS/V機(Windowslinuxが動くマシン)の話であって、専用設計のmacならデュアルコアでなかったとしても15〜20万はします。まぁこの点に関しては一概に比較することはできない話なのですが、何が言いたいのかというと一般のパソコンにはCPUという演算部分と、モノによってはGPUというグラフィック処理専門のボードが載っていて(廉価機はCPUが肩代わり)、そしてPS3にはIBMと共同開発したCellと呼ばれる高性能なCPUと、GPUで圧倒的なシェアを握るNVIDIA社と共同開発したRSXというハイエンドGPUが載っているということで、これだけでもハードウェアとしては一体いくらになるんだろうと驚きを覚えます。これによって作られる3Dのリアルな映像を見てみれば、すごさも納得してもらえると思います。映像はちょっと検索すればすぐに見つかります。PS2なんか目じゃないし、xboxよりも上を行っているはず。
そこで言いたいのは、何度も繰り返すようで申し訳ないのですが、このような映像を処理するためにはかなりの性能が必要で、その性能でこの価格は安すぎないか?と僕は思うのです。もしそれで映像表現のみの追求ならがっかりですが、ゲーム好きとしてはゲーム性やストーリーがこれまでと同等以上ならこのような映像でやってみたいし、このレベルの映像表現で新しいメタルギアやFFをやってみたいと思います。
もしゲームする人がPS3がありえない高さだと思うならWiixboxを選び、次世代ゲーム機の勝者を決めてしまえば良い話で、互換性だって、PS2でできることはPS2でやってしまえばいいと思います。そうすれば全てのソフトメーカーはそちらへ移行し、みんながやりたいと思うビッグタイトルのゲームはそっちで出ることになるでしょう。
ただ、PS3がゲーム機としては高いにせよ価格をはるかに超えた性能をしているというのは知ってほしいと思います。前回、冒険という意味ではPS3の方がはるかに上だと書いたような書かなかったような気がしますが、シェアを他社に奪われた場合には久多良木社長はSCEI社長を追われるはもちろんソニー本社の経営を圧迫するのは間違いなく、ここまで思い切ったことをできるのは、先進性を追及や企業の体力を含めsonyしかないのではないかと思います。

次にblu-Ray Diskについて。HD-DVDとの絡みで、「blu-Ray Diskを普及させたいから載せてるのであって、こんなのあるから高くなってるんじゃないの?」という人もいますが、これについてはむしろ逆だと思います。おそらくblu-Ray Diskを普及させたいのは間違いないのでしょうが、上のハード価格のことを考え合わせるとblu-Ray Diskについては収益をまったく度外視しているはずです。blu-Ray Diskの普及に伴うその他の波及効果の利益を重視しているために、PS3がむしろ安くなったという見方もあるかもしれません。どういうことかというと、ただ単にblu-Ray陣営が勝利し、映画や記録媒体としての収益を上げるだけではなくblu-Rayプレーヤー中最も高価な部品:青色半導体レーザの単価を劇的に下げることができるだろうからです。そういえば今回のHD陣営とblu-Ray陣営との戦いを昔のVHSとβとの規格争いになぞらえ、sonyを嘲笑しようという人もいるようですが、むしろ僕からするとそんな議論をしているほうが笑ってしまいます。VHSとβの場合は同じ磁気テープでもカートリッジサイズも違えばテープ送り速度も機構も違って互換性など考えられず、記録時間や価格による普及速度の違いでVHSの勝利に終わったわけですが、光ディスクの場合原理も機構もほとんど同じなので、レーザの波長や出力さえ十分なら多少のカスタマイズで互換が可能です。DVDにもわけが分からないくらい種類があることは(DVD-ROM 、-R 、-RW 、-RAM 、+RW)よく知られていますが、全て対応しているドライブがあることからも明らかで、現在はその価格差も小さくなっています。HDとblu-Rayがどちらも残ったとしても、両方の規格に互換した製品が出ることは間違いないでしょう。ただし、この争いはVHSとβと同じくらい激しいにせよ、HD陣営のNECblu-Ray陣営のソニー合弁会社を作ってHD-DVD向けの光ディスクドライブを作ったりするわけで、実際の状況は複雑です。PS3の出荷遅れの原因は半導体レーザーチップの量産が遅れたためなのですが、それでも量産化を実際に行っているsony半導体レーザー技術力が高いということは間違いないのでしょう。そんなわけでblu-Ray DiskがPS3に載っているのは高くなるだけの無駄機能でもなんでもなく、今後の映像ソフトとプレーヤーの発売状況にもよるが、プレーヤーとしてだけでもお買い得といえるかもしれません。

というわけで、僕は買いたいけど高すぎると言う人の批判が的外れだと思っているんですが、いかがでしょう。言うなればゲーム機はこの位の価格であるべきだという消費者の期待をSCEIが裏切ったということだけです。PS3が提案したのは高性能なマシンによる圧倒的な音楽&映像体験と臨場感であって、その価格自体はある意味で破格です。それにどういった評価が下されるかは買った人の数次第でしょう。
上にあるのは皆マイナス部分に関する話なので、他のハードにはないPS3の可能性、魅力みたいなのもできればお話してみたいところです。

前回同様、このようなとりとめのない話をお読みいただいた方には感謝感激でございます。ホント、長くてすみません…