航空路線などの公共交通機関の存廃も、まずは費用対便益を出してみては


 こういうのは基本的には感心しない。
 ただ都会の赤提灯談義でたまに聞く「地方なんて滅んでしまえばいいな」的な極論に与し、地方自治体の窮状を嘲笑う悪趣味はない。JALを苦しめたのは、むやみに空港建設を要求したお前らのせいだという意見もあるが、今回の陳情団の顔ぶれを見ると、国益上重要な空港を抱えた自治体の首長もおり、そういう批判は少しお門違いだろう。
 私は航空路線の存廃も費用便益比を計算すればいいと思う。基本的に事業収支の方が厳しく出るので、赤字でも費用便益比が高ければ運行継続の可能性を模索すればいい。赤字なのはJALの運行コストが高かったり、大型機を使用して効率が悪いせいなら、LCCに路線の継続を打診すればいい。それでも収支が厳しいなら、自治体は補助金を出しても運行を続けるべきか否か考えるべきだ。もし費用便益が高いのに廃止してしまうとなると、最終的には税収減という形でマイナスの作用を及ぼすはずであるから、きちんと説明できれば納税者も納得するはずだ。もちろん国税収入にも影響しているので、その分は国に補助金を求める根拠になるだろう。
 すぐに税金の無駄遣い批判に晒されるのは、説明が足りないからだ。当然批判に耐えるためには、かつて横行したいんちきBtoCではダメで、緻密な計算が求められる。新規建設と違って廃止の判断の場合には、実際に利用した実績が自明なので、そう狂いのないデータを出せるはずだ。
 日本の交通政策はダブスタで、道路が費用便益比という緩い基準で建設されるのに対し、公共交通機関は事業収支が基準になる*1。航空路線も鉄道もバスも赤字なら廃止になっても仕方ないと我々は考えてしまうが、本当にそうかよく考えた方がいい。事業収支は赤字でも、その赤字額を上回る便益を生んでいれば存続を模索すべきではないか。安易に廃止して、それで赤字垂れ流しが止まっても、その結果企業が移転したり観光客が減少したり、人口が減少したら、赤字額をはるかに上回る損失が出ている可能性がある。
  話しを戻すが、地方自治体首長はよくわからない陳情は無意味だからやめて、もう少し攻め方を考えた方がいい。こういう無意味な陳情をやっていると、「地方なんて滅んでしまえばいい」と言い出す愚かな都市人を誘発することになる。

*1:道路に比べ公共交通はなかなか整備も進まなければ廃止されることも多い。日本のモータリゼーションが止まらないにも、別に高速1000円が始まったからでなく、構造的な問題なのである。