自称経済学者・池田信夫の何が悪いか

【追記&再掲】

池田信夫氏は自称経済学者を名乗っているが、池田氏の博士号は(政策・メディア)でありなぜ経済学者を自称しているのか甚だ疑問である。
また、この表現を使用するメディア・マスコミも同罪であると考える。



池田氏がデフレの何が悪いのかという反論めいたエントリをしているので、再反論しよう。

かつてはネット上で一部の学生に人気のあったリフレも最近はすっかり下火になって、「量的緩和で株価が上がる」とかいうオカルト的な(因果関係の証明できない)話しか論拠がなくなったようだ。ただ世の中にはデフレが諸悪の根源であるかのように騒ぐ人がまだいるので、問題を整理しておこう。

⇒因果関係が説明できない?
岩田先生は回帰分析をしている。回帰分析に因果関係の証明ができないと批判するのは統計学を理解していない?


私のブログ記事でも書いたように、ゆるやかな(予想できる)デフレには大きな弊害はない。よくいわれるデフレの弊害としては、次のようなものがある:

実質賃金が上がって企業収益を圧迫する:これは岩田規久男氏が証明したように、事実ではない。2000年代に日本の実質賃金は下がっている。
実質債務が増えて企業経営が苦しくなる:これも岩田氏が示すように、事実ではない。企業は借り換えで実質金利を下げることができ、事実下がっている。
円高になって輸出産業が困る:デフレによる円高は実質実効為替レートに影響せず、長期的な国際競争力は変わらない。
自然利子率がマイナスになって「意図せざる金融引き締め」が行なわれる:これはありうるが、金融政策で是正することはむずかしい。


名目賃金が下がれば固定金利で住宅ローンを借りている人はものすごく苦しむ。

⇒土地や株がデフレで下がるのはもちろん、金利には非負制約があるので銀行はお金を貸さなくなる。企業は困る。

⇒輸出産業は日本の比較優位産業。岡田靖氏と浜田宏一教授の研究通り交易条件は悪化する。論文への反論は?

⇒自然利子率がマイナスの根拠は?定量分析の結果は?妄想でしかない。


他方、デフレのメリットとしては次のようなものがある:
価格の低下で実質所得が上がる:これはユニクロ型デフレというような問題ではなく、実質資産も増えるので消費は増える(ピグー効果)。
円高で原材料が安くなる:通貨が強くなると交易条件が改善することが多い(ここ数年の円高局面でもそうだった)。これは素材産業や内需型企業にとってプラスである。


⇒土地や株は下がり続けるが、資産の増加?

⇒交易条件が改善したというデータは?少なくとも岡田靖さんの研究では悪化しているが


要するにデフレは、輸出企業から内需企業と家計への所得移転なのだ。輸出企業はこの問題を海外移転で乗り切ろうとするので、残された内需型企業がデフレのメリットを生かさず、消費者が金を使わないことが不況の原因である。この解決策は簡単ではないが、ユニクロのようにデフレや円高のメリットを生かすサービス業がもっと出てくることが重要だ。

海外移転したら雇用が失われGDPが減少するのは必然的だが?


長期的には貨幣は中立だというのが、経済学の鉄則である。貨幣は商品を仲介するだけで、それ自体に価値はないので、貨幣を増やしても減らしても実体経済は変わらない。金融政策が意味をもつのは、価格の硬直性や貨幣錯覚の生じる短期の問題だけである。実体経済を改善しないで、日銀だけで不況を解決することはできない。

⇒名目GDPが増えなければ実質的な国の債務は増大するが?



とまあ池田信夫の問題は、定量的データをひとつも上げられないことである。
自称経済学者なら論文を書いて反論したらどうだろうか