「男性というものは、どんな低い身分の人だって、 心持ちだけは高く持つものです。 あまりめいったそうしたふうは見せないようになさいよ。 あなたがそんなに 思い込むほどの価値のあるものはないではないか」 「それは別にないのですが、 六位だと人が軽蔑《けいべつ》をしますから、 それはしばらくの間のことだとは知っていますが、 御所へ行くのも気がそれで進まないのです。 お祖父《じい》様がおいでになったら、 戯談《じょうだん》にでも 人は私を軽蔑なんかしないでしょう。 ほんとうのお父様ですが、私をお扱いになるのは、 形式的に重くしていらっしゃるとしか思われません。 二条の院などで私は家族の一人として 親し…