ずいぶん前になるが、『たぶん悪魔が』という古いフランスの映画を見た。1970年代あたりのフランスで、あるエリート男子学生が自殺に至るまでの顛末を描いたものだった。明快な筋書きがあるわけではなく、いくつもシーンを並べることで何かを象徴的に浮かび上がらせるタイプの作品のようだった。 乏しい批評眼で見た限りだが、共同幻想の消滅、資本主義と国家の暴走、それらによる虚無的・終末的なビジョンが主なモチーフになっていた。物語の序盤、主人公は新左翼の集会や教会の説教に出席するが、そのいずれにも幻滅する。そして、環境主義者の友人は映画内ではしばしば煤煙を排出する工場や森林伐採、油を流出させるタンカーといった自然…