トランスクリティーク

読書

トランスクリティーク

とらんすくりてぃーく

柄谷行人

 「群像」連載時の原稿をほぼ全面的に改稿し、大幅加筆。本書は主にカント論とマルクス論によって構成される。著者は、カント哲学における超越論的統覚Xを、マルクス論において、貨幣の問題として読みなおしつつ、カント哲学アンチノミー問題を、「貨幣は存在する」「貨幣は存在しない」という命題に変更することで、現行貨幣と対比されるLETSの非資本主義的特性を明らかにしている。  本書における最大の成果の一つは、単に資本主義の構造を明確に示したことだけにあるのではなく、資本主義がネーションや国家との結合において存続する資本主義=ネーション=ステートをいう三位一体構造として存在することを指摘しつつ、それら三項が互いに還元されない独自の交換原理に自らの存在基盤を有していることを、初めて明らかにしたことにある。それは資本と国家への対抗運動を開始する著者自身の決意のなかで見出されたものであることを付け加えておく。

Kojin Karatani's Transcritique introduces a startlingly new dimension to Immaneul Kant's transcendental critique by using Kant to read Karl Marx and Marx to read Kant. In a direct challenge to standard academic approaches to both thinkers, Karatani's transcritical readings discover the ethical roots of socialism in Kant's Critique of Pure Reason and a Kantian critique of money in Marx's Capital.

Karatani reads Kant as a philosopher who sought to wrest metaphysics from the discredited realm of theoretical dogma in order to restore it to its proper place in the sphere of ethics and praxis. With this as his own critical model, he then presents a reading of Marx that attempts to liberate Marxism from longstanding Marxist and socialist presuppositions in order to locate a solid theoretical basis for a positive activism capable of gradually superceding the trinity of Capital-Nation-State.

カントによってマルクスを読み,マルクスによってカントを読む―社会主義の倫理的根源を明らかにし,来るべき社会にむけての実践を構想する本書は,絶えざる「移動」による視差の獲得とそこからなされる批判作業(トランス=クリティーク)の見事な実践である.昨年出版された英語版に基づいて本文を改訂.