いつかのどこかの風景が目の前に現れる。そんな魔法のような力が音楽にはあります。もういないはずの、どこかの階段の踊り場や体育館のすみっこなんかにうずくまるわたしにもう一度ならず何度でも会える。そんな場面へとわたしを誘う多くの音楽がある。わたしにとってそのひとつがサム・クックの歌なんです。 なかなかうんざりしている話があって、サム・クックというと決まって“うーん。ハーレム・スクエアはいいよね”みたいな反応。これはいったい何が言いたいのかというと『Live at the Harlem Square Club, 1963』というライブアルバムがありまして、あの激しさ、情熱的なパフォーマンスなどと比較し…