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ラブハラスメント

一般

ラブハラスメント

らぶはらすめんと

定義

ラブハラスメント」は新語であるが、従来の用語で言われる「環境型セクハラ」あるいは「モラルハラスメント*1」の一種である。恋愛及び性に関する話題を公共の場及び他者の面前で持ち出すことにより、他者に精神的苦痛を与えること、またその行為全般を指す。モラルハラスメント一般の例に漏れず、被害者がは幼少期に何らかの事情で自尊心を確立できなかったなど共通の要素があり*2、従って継続的に被害を受けやすいことが余計にこの問題を深刻にしている。

背景

現代日本社会、ことに一定年齢以下の世代においては、恋愛及び性が最大の関心事の一つとなっており*3、それらの分野における経験の多寡は、時として人間性の優劣と同一視される*4。このような暗黙の了解は、既に環境型セクハラの構成要件を満たしており、従ってこの「ラブハラスメント」は特定の環境下における問題ではなく、むしろ現代日本社会が殆ど至る所で引き起こしている矛盾であるといえる。

事象および影響

前項のごとく、ラブハラスメントは常に構造として存在しているものと言えるが、はっきりとした加害・被害の構図が浮き彫りになるのは、主に比較的若い世代における、酒席などを中心とした場である。これらの世代における最大の関心事である恋愛及び性の話題は、既にその経験の多寡などによって世代内の各人に優越感・劣等感をもたらしており*5、従って意識の中で彼らは「勝ち組」「負け組」に二極分化されている。

この「勝ち組」が酒席などの場において、「負け組」が望んでも得られぬような話題、あるいは耳にしたくもないような露骨な話題を持ち出すというのは比較的よく見られる状況であるが、このことは「負け組」の少なくとも一部にとっては多大な苦痛をもたらすものであり、彼我の格差に悲嘆した彼らは、自らの容貌や外見、生育環境や人格などに関して、多くの場合不要な劣等感をさらに上積みする結果となってしまう。過去の心的外傷(Trauma) などと結合して、精神疾患発病、自殺といった最悪の結末をもたらすことすら皆無ではない。

このような結果はおそらく「勝ち組」の者の予測を大幅に超えたものであり、また「勝ち組」の者は自らの言動が加害行為であることを認識してすらいないことも多いと思われるが、彼らが「恋愛ほど素晴らしいものはない」「誰でも努力次第で恋愛はできる」*6という価値観を信じて疑わない限り、何らかの責めを負うべきことは避けられまい。殊に後者の「誰でも努力次第で恋愛はできる」という命題は、言い換えれば「恋愛ができない者は努力が足りない」ということになり、「負け組」の苦悩の責めを「負け組」の当事者に押しつけて二重の責め苦を負わせていることになるからである。

実際問題として、いかに努力しても恋愛が不可能な者は存在するのであって*7、また一般に「努力で克服できぬ困難など存在しない」というのは最もありふれた欺瞞の一つであるのだが、どういう訳かこの件に関してはこのことを疑わぬ者が余りにも多いのである。なお、ラブハラスメントの別の形態として、「勝ち組」の側に立つ加害者が「負け組」の側に立つ被害者に侮辱を加える手段として恋愛・性に関する話題を用いるというものもあるが、これは従来のセクシャルハラスメントあるいはモラルハラスメントの一形態として説明できよう。

恋愛弱者以外に対するラブハラスメント

ここまで述べてきたことは、主に恋愛弱者(負け組)に対するラブハラスメントの考察であるが、世の中には、「そもそも恋愛に価値を置かない」「同性愛者」といった人々も存在する。こういった者に対し、上記酒席のような場で恋愛至上主義的価値観を当然のことのように振る舞うことは、彼・彼女達にとっては「価値観の押し付け」と感じられ、精神的苦痛を伴う場合がある。これは、「負け組」に対するラブハラスメントとは質的に異なるが、被害者に精神的苦痛を与えるという点は同じである。

この種のラブハラスメントの例として、「結婚するつもりのない婚期を過ぎた女性に対し、恋人の有無をしつこく尋ねる」「挙句の果てには説教を始める」等のシチュエーションが挙げられる。

注意書き

このキーワードは、純粋なココロ: 『ラブハラスメント』で、非モテとフェミは共闘できるんじゃね?コメント欄でのやりとりを通し、Leiermann氏の原文をid:Masao_hateが加筆・修正し、代理登録したものです*8


*1:「モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない」(ISBN:431400861X)などを参照。

*2:例えば「魂の殺人―親は子どもに何をしたか」(ISBN:4788501732)を参照。

*3:この現象は第二次大戦前後に既に西側諸国で観察されたもので、当時から既に「愛」の不可能性について多くの論考があるにもかかわらず、驚くべきことに半世紀以上を経た現在も未だ、大枠ではこの構造は崩れる気配を見せない。「愛するということ」(ISBN:4314005580)などを参照。

*4:このことに関しては、社会の構造自体がこれらの状況を醸成していると指摘する声もある。「電波男」(ISBN:4314005580)においてこの構造は「恋愛資本主義」と命名されている。

*5:各種メディアがこのような序列意識を煽るという問題も大きい。「日本の童貞」(ISBN:4166603167)などを参照。

*6:驚くべきことに、何らかのきっかけで「負け組」から「勝ち組」に転じた者の中にも、このような命題を主張する者が存在する。一例としては、「ずっと彼女がいないあなたへ」(ISBN:487290169X)など。

*7:「もてない男―恋愛論を超えて」(ISBN:4480057862)「恋愛の超克」(ISBN:4048836439)「帰ってきたもてない男女性嫌悪を超えて」(ISBN:4480062467)などを参照。

*8:加筆箇所は、「恋愛弱者以外に対するラブハラスメント」及び「注意書き」の項すべて。それ以外は参考書籍へのリンクを除き、原文まま。