季刊『三田文學』No.148(2022 冬季号) 『三田文學』最新号は坂上弘さん追悼特集。文学史的には内向の世代と称ばれた作家の一人で、同誌編集長としても、多大の尽力をされたという。小説家としては地味で手堅い作風で、名品が多いわりには、世間で騒がれたりすることがほとんどなかった。つまり玄人受けの作家だった。 さらにもう一足の草鞋を履いておられ、会社員としては(株)リコーに勤務していた。私は会社勤めをしているころ、『日経広告手帖』という業界雑誌の座談会で、リコー社員として発言しておられる写真を観て、あれぇ、コレって作家の坂上弘じゃねえのぉ、と眼を瞠ったこともあった。 追悼文および資料として、九人…