作家。1951年10月23日埼玉県生まれ。本名・加藤陽子。埼玉県立小川高等学校卒。書店、出版社に勤務するかたわら同人誌で詩を書く。池袋コミュニティ・カレッジの小説講座に通い、同人誌『こみゅにてぃ』に小説を発表。89年「静かな家」で芥川賞候補、「奇術師の家」で第1回朝日新人文学賞受賞、91年「別々の皿」で芥川賞候補、「公園」で三島由紀夫賞候補、93年「流れる家」で芥川賞候補。
今はこの本を読んでいます。 ここにいないものを ここで想うということ── 『水の出会う場所』や『菜飯屋春秋』で知られ、2021年に急逝した作家、魚住陽子が遺した個人誌『花眼』(ホゥエン)からの短編集。 2006年から2011年にかけ、計10号刊行された作家、魚住陽子の個人誌『花眼』。 自身や他の作家の短編はもちろん、自身の心情や近況を綴ったエッセイのような趣があるていねいなあとがきを収録したこの冊子は、装画のチョイスなどにも一貫した美意識を感じさせる。魚住陽子の長年のファンはもちろん、最近その作品に触れた方には特に魅力的なものに違いない。 2021年の急逝後、一周忌を前に発表した『夢の家』に続…
夏のおわりにかけて、作家、魚住陽子さんの著書を読んでいた。発表された作品は、決して多くはないけれど、一つひとつに重みを感じた。11歳の娘と夫を捨てて、男の元へ逃げる40歳になる妻の家で過ごす最後の時間を濃密に描いた「敦子の二時間」。冷静を装おうとするけれど、そうもいかない妻の心の動きに引き込まれる。 (function(b,c,f,g,a,d,e){b.MoshimoAffiliateObject=a; b[a]=b[a]||function(){arguments.currentScript=c.currentScript ||c.scripts[c.scripts.length-2];(b…
魚住陽子 さん 作家。 1951年(昭和26年)10月23日、生まれ。2021年(令和3年)8月22日、死去。 訃報 魚住陽子さん死去 作家:東京新聞 TOKYO Web 魚住陽子さん死去:朝日新聞デジタル
須藤佑実『夢の端々』より。 幼いころのことだ。だれかが数分前までいたような、あるいはずっと前に歩み去ったような庭を見たことがある。 そこには見知らぬ――しかし不思議と親しみさえ覚えることができる――人々の息づかいが感じられ、優しい風と緑に包まれ、柔らかな日差しが差し込んでいた。そして不思議と、かつて自分もこの小さな庭を訪れていたような気がしていた。あるいはそれは、自分が思い出せない遠い過去に、物語で訪れた場所であったのかもしれない。 記憶をめぐる小説には、しばしばこうした、しずかな予兆と確信とが横たわっている。むろんそれは大切ななにかとの〈再会〉へと向かっていくことになるのだが、掴み所がないま…
タイトルの通りです。え、もう八月なかばなのに上半期のはなしを? ブログはどんな自由な発想で書いてもいいので……。順不同、新作旧作問わずとりあえず記録用に書いておきます。 エルサ・モランテ「一日」 アンダルシアの肩かけ 作者:エルサ・モランテ 河出書房新社 Amazon 池澤夏樹世界文学全集レビューように肩慣らしによんだ。正直モランテは長編のほうが圧倒的に面白くてこの短編集は小品や習作だな、という感じなのだが、「一日」はもうひとりで起き上がれなくなった老人が朝起きて、介護を受けて、窓から通りを眺めてはその前を通るひとびとに声をかけて、ごはんを食べ、夜に眠るだけの話なのだが、ここにはスケッチ以上の…
魚住陽子『夢の家』を読んだ。短編集。作者は昨年亡くなっていて、遺作集のようだ。 芥川賞の候補に2度上がっているが、生前、それほど注目はされなかった作家。もちろ ん私も知らなかった。 どの作品も、濃密な死の気配が漂うが、言葉の紡ぎ方が素晴らしく、イメージ豊か。 後半、読むのが辛く感じることがあったが、読み終わって)凝縮された中身の濃い小旅行に行ってきたような気持ちになった。(駒草出版 2022年) 表題作「夢の家」には死者は登場しない。なくなったものは人生の晩年に訪れた恋だ。画家の女性とコレクターの男性の夢の家の生活のしたに隠された無残な所有欲の発露である暴力と狂気を描き出す。実際の事情とはずれ…