春は出会いの季節というが、京都大学の大学院に入学した春は、それまで繰り返してきたどの春よりも多くの出会いがあった。 反りの合わない研究室の面々。新しいバイト先の人々。そしてこの先の2年間、一つ屋根の下で暮らす、熊野寮の寮生たちである。 無事に入寮面接をパスした2週間後、どういう星の巡り合わせか、私は例の談話室部屋に入居することとなっていた。しかも寝床は、色々あって例の押入れの上段だ。 その春、談話室部屋には、私を含め3人の新入寮生が入居した。私以外の2人は中国から来た留学生で、仮にシンイーさんとルォシーさんと呼ぼう。 談話室部屋に2年前から住んでいた日本人のミサキちゃんは、飄々とした性格の少し…