心から かたがた袖を 濡らすかな 明くと教ふる 声につけても 許されぬ恋人たちの秘密の逢瀬🪷 尚侍(ないしのかみ)の歌🍃 〜あれこれと考えると心の底から悲しくて、 涙で袖を濡らすことです。 夜が明けることを告げる声を聞くにつけましても。 【第10帖 賢木 さかき】 心から かたがた袖《そで》を 濡《ぬ》らすかな 明くと教ふる 声につけても 尚侍のこう言う様子はいかにもはかなそうであった。 歎《なげ》きつつ 我が世はかくて 過ぐせとや 胸のあくべき 時ぞともなく 落ち着いておられなくて源氏は別れて出た。 まだ朝に遠い暁月夜で、 霧が一面に降っている中を 簡単な狩衣《かりぎぬ》姿で歩いて行く源氏は…