→坪内逍遥
父は日記を書く人間で、ルーズリーフに欠かさず30年ぐらい日記を書き、紙束の山のいよいよな重量に驚いた思い出がある。おれは何もかもが続かない人間で、心臓の鼓動と睡眠の習慣ぐらいしか持続するものがない。抗って書いてみる。意識して書いてみる。忘れないように、ではなく、日々忘れながら、書くために書く。一日を通時的に分解するのではなく、トピックもまばらでよいと思う。とにかく何も決めないことが肝要な気がする。 19:00に仕事を切り上げて、帰宅。『日本近代文学』第105集の、多田蔵人「言葉をなくした男 ―森鴎外『舞姫』―」をようやく読み切った。『舞姫』といえば日本人エリートの太田とドイツの少女エリスとの恋…