ベルトルト・ブレヒト(1898-1956)が墨子の偽書という形で『転換の書 メ・ティ』(遺稿原著 1965, 績文堂 2004 訳:石黒英男+内藤猛)を書いたと知ったことと、柄谷行人の最新著作『力と交換様式』(岩波書店 2022)の第Ⅰ部第4章「交換様式Dと力」8「中国の諸子百家」において現代においては孔子や老子の思想とは異なり歴史のなかでいったんは消されてしまった墨子の思想(特に「兼愛」の思想)を取り上げているところから、墨子全体像を体感できる全訳本の本書を読んでみた。原文、書き下し文なしの現代語訳からのみなる著作であるため、専門的には扱いに注意が必要である旨の情報がネット上には出ているが、…