酸化還元電位の定義については、調べれば出てくるので割愛する。ここでは有機光化学を研究する際のもう少し実際的な話を取り扱う。 注: この記事では一つの電子の授受のみを扱う。また、簡潔さを重視して励起状態はS1のみを考える。 まず、実際に論文で頻用されるのは「酸化還元電位」ではなく「酸化電位」「還元電位」という表現である。これらは何が違うのか。 酸化還元電位は例えば下のような一つの半反応式について定義される。 NEt3 ⇄ NEt3・+ + e− このトリエチルアミンが一電子を失う式の酸化還元電位は0.83 V (vs. SCE) である(文献: Synlett, 2016, 27, 714-72…