バスルームからの足跡。床の隙間に飲みこまれず、不器用に球。タオルを忘れ、椅子に腰掛ける。胸をくすぐり落ちて行く粒。水紋を作り、またひと雫。向かい合わせの椅子。そこにいる誰かを意識して。この身体の全てをさらして、自分に酔う。自分の体に酔う。肌に残る湯の一片。 「ここを」 。軽く口を開け、のけぞる。歯が、軽く唇に。髪が集めて、また一粒、抗えずにちぎれて。そこに置かれていた掌が、顎を、頬を包みこみ、耳を。そして指の隙に絡ませる。手の甲に浮かぶ膜。そしてまた来た道を戻る。足を、椅子の上に組む。足首を両手で掴みながら、今度は前へ。髪はもつれ、目の前にブラインド。 「背を」 。先端に、そして頬と鼻を一撫で…