春009

 出会ってきました。

 あんまりしゃべらない人だったら、どーしよ、と思っていましたがそんな心配は無用でした。流石、私2号。

 10分ほど前に、待ち合わせ場所に着いたのだけど、メールも来ないし、あちらの方が遠隔地のはずなので、しばらく待ち合わせの店内をうろつきました。

 駐車場の入り口を通り、駐車場内へ進む。空いているところがあるかどうか、例の黒のオープンカーがあるかどうか見ながら進む。店の入り口の前を通過すると、それらしき人影が。

 車を止めて、時計を見る。10分前。急かすのもアレだしと、メールを送るかどうか迷う。外は雨、車を降りるならばちょっと急ぎ足で店内に向かった方が良さそうだ。例え、同じ雨粒の密度の空間を走ろうが歩こうが、濡れる量は変らなかったとしても。
 入り口付近を見回すけれども、先ほどの人影は見当たらない。仕方なく、そのまま店内に入り、入り口に近い、ケータイコーナーの辺りをうろつく。

 集合時刻。メールを入れてみる。2分ほどで返ってきた。入り口にいて、マスクをしているらしい。
 出口に向かって歩く。外側に、見覚えのあるコートと髪型の人が立っている。上着が、写真と同じだ。マスクをしていて、先ほど見かけた人が、やっぱり本人だった。

 「こんにちは」と声を掛けると、私の名前を呼んで挨拶してくれたのだけど、微妙に間違えてた。確かに、活字で見ると私の名前はそれと間違えやすい。でも、打つときにどうやって変換してたんだろう?この間違えは良くあるので、特に気にせず、お昼ご飯をどうするか話す。
 この時間帯だと、私が好きなお店のランチタイムは終わって、ティータイムになっているはずだ。食事メニューが出てこない。なので、ファミレスにすることにした。

 車を見て、驚く。黒のオープンカーとは聞いていたけど。
 私は普段、自分で車を運転して移動する。私は、そういう地域に住んでいるから。人の車に乗ることが滅多にないので、たまに助手席に乗せてもらうと違和感がある。この違和感は、免許を取り立ての頃に運転席で感じていたのと、同じものだ。
 オープンカーと言うのは、たいてい二人乗りなのだが。私は、間違えなく助手席に乗り込んだはずだ。しかし、例の違和感が全くない。
 オープンカーという辺りから、マツダロードスターと予測した皆さん、残念でした。バームクーヘンの国からやってきた車だぜ。
 しかも、運転するときは必ず手袋をする。断じて、白の木綿のやつじゃない。もっとカッコイイ、レザーグローブという感じのやつだ。

 お店に着くと、並んでいた。ちょっとお昼の時間帯を外したタイミングだと、こういった営業時間の長い飲食店はどうしても混む。

 のんびりしている私に対し、さっと店内に入って名前を書く。あ、そうえいば、最近混んでいる時間帯に来ないから、すっかり忘れていたけれど、そうしないといつまで経っても名前を呼んでもらえないのだった。
 名前を書く前に、私に一言。「喫煙席でも良い?」

 席に着き、メニューを選ぶ。選び終わると、無言で相手が決めるのを待つ、そんな態度は微塵のかけらもなく、メニューを閉じながら、「よし、決まった」と決まったことを表明。私も決まっていたので、少し遅れてメニューを閉じる。

 しかし、風邪の中、よくここまで来たもんだ。マスクをして、咳をごほごほしながら。個人的には、咳をしながらでもタバコは吸う喫煙者の姿が、昔から非常に興味深い。別バラだそうな。
 喫煙に対するルールには厳しいというか、車内は絶対禁煙だし、換気扇の下か、喫煙が許可された場所では吸わないそうで。

 彼は、エントランスで待っていたときから、いい加減病院へ行くべきかどうか悩んでいたので、背中を押しておきました。今週から年度末で忙しくなり、いよいよ、仕事を休んでいられないらしいので、これは病院へ行くしかないかと。

 注文を終えて、ドリンクバーに飲み物を取りに行く。ホットとアイスの両方のカップを持ってっても良いのかな?なんてことを心配する辺りが、ちょっと面白い。

 落ち着いて話ができる感じになって、真っ先に登場した話題は、うちの県の人、つまり、この田舎でどうやって遊んでいるのか、という質問だった。
 確かに、この質問は、相手を選んでしないと、失礼だと受け取られる可能性もある。話を聞いていると、どうやら彼は、都市部にしか住んだことがなく、最初はこの田舎に来たときに、ちょっと精神的にヤられて、カウンセリングを受けて立ち直ったそうな。
 同じ職場(部署も含む)に2年といたことがない、9年で3都市を回り、今の田舎が4ヵ所目。数年後の自分を見ている様である。たまたま前の日にニュースゼロでやっていた、団塊ジュニア世代は「自分探し世代」というのが、しっくり来る、と言っていた。

 私は団塊ジュニアではないけれど、彼の話を聞いていると、何でこんなに自分と思考回路が一緒なのかと、不思議だ。

 その他、日頃彼が田舎に対して抱いている疑問に答える感じの会話が多かった気がする。言われて見れば、確かに。井の中の蛙な生活を送っているのだと実感。

 食事を終え、近くの100円ショップへ行く。食事の前に、帰りに寄りたいと言っていたので。私はおととい来たばっかりなので、特に買うものはないので、彼に何を買いたいのか聞いてみる。
 それならば、と、店内を案内する。私が100円ショップ好きと言うのもあるけれど、こういうところのカテゴリーの振り分けは何となく分かるというか。
 最近は「200円です」という、このシールの品もあるので要注意、と言うと、ちょっと驚いていた。ホントに、あまり100円ショップには来ない様だ。
 売り場にほぼ一発で着くので、買い物が妙に効率的に済まされる。

 お昼代を出してもらったので、ここの買い物代を代わりに出す。この程度だと、お昼代にはならないのだけど。いやだって、飲食店内でお昼代を差し出すのは良くないとおねいちゃんが言ってたし。昼食が小銭で済んでしまったので、じゃりじゃりど差し出すのも微妙だし。

 ドライブに出る。私があまり行ったことのない方へ行ってもらう。運転中も、会話が途切れることはない。体調不良で、私とこんなに会話できる人もすごいかも。

 30分ほど走って、折り返そうか、という話になる。先ほど、ドリンクバーでお茶をティーポット2杯も飲んだので、トイレに行きたくなる。折り返しのところに選んだお土産やさんが閉まっていたので、もう少し先の道の駅まで行ってもらうことになった。

 私は景色を見ながら感想を言うと、「うん、その辺りは絶景っぽいよね。いつも、あんまり見られないけど。」運転してれば、そりゃそうだ。
 折り返ししてから、山の天気はすぐに変わるね、なんて話をしたり。

 だいぶ里に下りてきてから、相変わらずコンコン咳をするので、「大丈夫?」と聞くと、
「いや、実はあんまり大丈夫じゃない」とお返事。峠通るとちょっと大変だし、帰り、どう帰ろうなんて話題が登場。
 来週にした方が良かったかな?と私が言ったら、来週再来週は忙しいらしく、時間が取れるか分からないそうで。ああ、だから今週にしたのかなぁ。

 最初の集合場所に戻ってきて、思いっきり鼻をかむ彼。風邪、悪化させてしまったかな。またね、と見送る。

 次の予定とか、それどころではない感じ。今日はよく来たなぁ。

 家に帰り、お礼のメールを送る。2〜3時間経って、返事が来た。無事に帰り着いていただけて、良かった良かった。