Cell-Intrinsic Adaptation Arising from Chronic Ablation of a Key Rho GTPase Regulator]

これ、面白い。
急激にDOCK6の発現を低下させた時と、ノックアウトした時では、後者では適応してしまってフェノタイプが薄れてしまう、というもの。しかも特定の蛋白質を突き止めてそれを操作すると、急激に減少させた時と同じになる、というところまで出している。

培養細胞は適応するのに、個体では疾患になってしまう。面白いなあ。

DOCK6が変異している疾患:Adams-Oliver syndrome (AOS) 皮膚の障害と肋骨の欠損らしいです。

B6マウスでDOCK2のコピー数が違ってた!

PMID: 27210752
Striking Immune Phenotypes in Gene-Targeted Mice Are Driven by a Copy-Number Variant Originating from a Commercially Available C57BL/6 Strain.
Mahajan VS, Demissie E, Mattoo H, Viswanadham V, Varki A, Morris R1, Pillai S.
Cell Rep. 2016 May 31;15(9):1901-9. doi: 10.1016/j.celrep.2016.04.080. Epub 2016 May 19.

汎用のC57BL/6ではDOCK2が抜けていることがあるという論文。
DOCK5のKOで時に変なフェノタイプが出ることがあって、環境の所為?と適当に処理していたが、これが該当するのかも?

先日の学会で、初めて福井先生のお会いした。このブログ見たことがあり、内容に同意したこともあるとお聞きした。。。そんな訳で約3年ぶりの更新です。

DOCK180があると乳癌の予後が悪くなる。

PMID: 23592719
Rac-specific guanine nucleotide exchange factor DOCK1 is a critical regulator of HER2-mediated breast cancer metastasis.
Laurin M, Huber J, Pelletier A, Houalla T, Park M, Fukui Y, Haibe-Kains B, Muller WJ, Côté JF.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Apr 30;110(18):7434-9.

 カナダのJFのラボから。彼はVuoriのところでDOCKをやり始めて、Ravichandranと組んだりしてDOCKファミリーの機能を色々明らかにしている。最近では九大の福井先生とも一緒にやっているようだ。

 MMTVのプロモータ下に、NueNDL2-5というHER2を発現させて、IRESでCreが発現するマウス(NIC)と、DOCK180のExon1近辺ををFRTで挿んだConditionalKOを作製し、交配。NICマウスは乳癌を作るだけでなく、肺にも転移するので、このモデルを使って乳腺形成や癌の発生には関与しないけど、DOCK180は癌の転移のところで効きそうだと提案。培養細胞を用いた実験では、HER2が活性化されるとSrcによってDOCK180のY1811がリン酸化を受け(この部位のリン酸化は既知)、Racに対する活性が上がり、細胞運動が上昇する。
 ネズミの癌からDOCKの有無で、RNAシーケンスを行い、Signatureを調べてみると、IFN関連がDOCKーKOでは下がっていて、STAT1/IRF9、RTP4が中心となったネットワークをDOCK-Racが支配しているらしい。また、ヒト癌組織での免疫染色も行っていてそれを裏付けている。
 マウスを作っている噂?は数年前から聞いていたが…ちゃんと狙い通りのフェノタイプが出た。
 DOCKが発現している細胞は原発巣では少数だが、転移巣ではメジャーに成ると出ている免染…核も染まっているように見えますが…いいんでしょうかね?

 JF、1月に九大の福井先生のところに来るのだが、MMの計らい?で、金沢にも寄ってくれることになりました。
 会うのは初めて。楽しみだ!

食道の腺癌ではDOCK2が変異している。

PMID: 23525077

Nat Genet. 2013 Apr 26;45(5):478-86. doi: 10.1038/ng.2591. Epub 2013 Mar 24.

Exome and whole-genome sequencing of esophageal adenocarcinoma identifies recurrent driver events and mutational complexity.

Dana-Farber、MIT、Harvardの東海岸から。

食道を構成するのは重層扁平上皮なので、腺癌は出来ない。

という、病理総論でありがちな〇×問題。答えは×。
化生(ある系統の分化した細胞が、別の系統の細胞になること)により、バレット上皮と名のついた腺上皮になる。これが癌化すれば組織型は腺癌。

癌で見られる変異は、癌そのものを起こすDriverMutataionなのか、それとも変異が誘導されたことで査読機構などが機能しなくなり、受け身的に変異を受けたものなのか?という見極めが必要となる。前者は治療に使えるが、後者はマーカー止まりである。

この論文は、食道腺癌の変異を調べてみて、26個の遺伝子を拾い上げてきた、というもので、その中にはDOCK2とELMO1が含まれていた。ELMO1の変異では浸潤能が高まるデータがあるものの、DOCK2は、血球系でしか発現していないはずなので、この変異がどういう影響があるのか…?不明。こういう論文になってしまうと、どこまでが信用できるデータなのか?全然わからないので、書いていることを信じるのみである。ストレスがたまる。

筋融合にはアポトーシス細胞が必要

PMID: 23615608

Nature. 2013 Apr 24. doi: 10.1038/nature12135. [Epub ahead of print]

Phosphatidylserine receptor BAI1 and apoptotic cells as new promoters of myoblast fusion.

Hochreiter-Hufford AE, Lee CS, Kinchen JM, Sokolowski JD, Arandjelovic S, Call JA, Klibanov AL, Yan Z, Mandell JW, Ravichandran KS.

オール・バージニア大。
直接DOCKとは関連がないが、DOCKがないと筋芽細胞の融合の頻度は減るので、一応関連。

アポトーシス細胞では、普段は形質膜の内側にいるPSが表に出てくるのが、「食べてくれ」信号になり、マクロファージなどによる除去が始まる。この論文ではアポトーシスで死んだ細胞のPSが融合には必要という画期的な視点を持ち込んだ論文。
培養細胞ではC2C12細胞というのが筋融合のモデルとして使われているんだが、なんせ融合の効率が一定しない。それで何が原因でぶれているのか?もよくわからない。しかも、ガラスに撒いてみても筋収縮が出てくると剥がれていってしまうというライブイメージング泣かせの細胞である。PSを加えることで、一定するのだろうか…?

DOCK5は骨肉腫で発現が低下している

PMID: 19286668

Identification of interactive networks of gene expression associated with osteosarcoma oncogenesis by integrated molecular profiling.
Sadikovic B, Yoshimoto M, Chilton-MacNeill S, Thorner P, Squire JA, Zielenska M.
Hum Mol Genet. 2009 Jun 1;18(11):1962-75.

PMID:18698372で開発された、「an integrative approach for genome-wide high-resolution profiling of genetic, epigenetic and gene expression changes」を用いて、ヒト手術材料からゲノミックDNAやマイクロアレイを用いて発現を全部調べた論文。10例中5例で、DOCK5とTNFRSF10A/Dの染色体上の場所である8p21.2-p21.3が欠失し、アレイでは発現が下がっているという結果を得ている。

これが、
PMID: 20465837
Expression analysis of genes associated with human osteosarcoma tumors shows correlation of RUNX2 overexpression with poor response to chemotherapy.
Sadikovic B, Thorner P, Chilton-Macneill S, Martin JW, Cervigne NK, Squire J, Zielenska M.
BMC Cancer. 2010 May 13;10:202
治療に反応せず予後が悪い骨肉腫臨床サンプル(Huvos grade)での検証につながる。発現の大体の傾向は以前の論文と同じだが、TNFRSF10A/Dは有意ではなかった。治療とはこの場合、cisplatin, doxorubicin, methotrexate。
予後との相関があったものは、RUNX2(骨肉腫で上昇)のみ。
ホルマリンサンプルからもRNA取れるんだ。

DOCK5は破骨細胞に分化すると発現量が上昇する

PMID: 16939397
Expression profile of RhoGTPases and RhoGEFs during RANKL-stimulated osteoclastogenesis:
identification of essential genes in osteoclasts.
Brazier H, Stephens S, Ory S, Fort P, Morrison N, Blangy A.
J Bone Miner Res. 2006 Sep;21(9):1387-98.


マウスマクロファージ細胞株RAW264.7はRANKLをかけると、3−4日で細胞融合が起こり、4−5日でTRACP+の破骨細胞になる。
65のDblを持つRhoファミリーGEFと、11のDOCKファミリーをマイクロアレイで見てみた。
まずこの細胞で発現しているのが42個。そのうち発現が上昇するのが7個(RT-PCRでも確かめ)。更にHSC(haematopoietic stem cell)やBMM(bone marrow macrophage)を分化させてRT-PCRで3倍以上の上がりが見られたのがDOCK5とArhgef8。RhoファミリーではWrch1のみ。
DOCK5はshRNAで細胞が死んでしまうので調べられなかったが、残り2個の分子は発現低下させるとRAW264.7細胞の細胞融合が起こらなくなる、というのが最後の締めのデータ。

プレニル化の阻害薬であるBisphosphonateが骨粗しょう症の治療に使われているのが、動機となっている。
DOCK1もDOCK2も分化で発現量が減っており、DOCK4は変化なし。

この論文ではRacが分化で上がることは出していないが、次の論文では(21542010)G-LISAで一応調べてはいる。