4 2010 新刊案内 東京創元社

表紙は「インディゴの夜 Dカラーバケーション」のカバー。新刊案内中に「銀河英雄伝説」舞台化のお知らせ。芝居ねえ、「スターウォーズ」なんかもミュージカルになったりするのか、まあどおでもいいけど。

MYSTERY通信(海外)
ローザン「夜の試写会」はMWA賞受賞作を含む日本オリジナル短編集。女性探偵と犬のコンビが活躍するベンジャミン「パセンジーは哀しみの犬」、芸術史家シリーズ第2弾のテイラー「死者の館に」、サスペンスの名手アームストロングの初訳作「風船を売る男」に加えて、ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」新訳も。
MYSTERY通信(単行本)
お待たせいたしました。ミステリーズ連載時より大幅加筆された「綺想宮殺人事件」がついに単行本に。本格の雄・芦辺拓が描ききった「探偵小説の最期」、今年これを読まずして何を読む!昼ドラから今度は舞台化するシリーズ最新作「インディゴの夜 Dカラーバケーション」も、是非既刊と併せてお楽しみください。
FANTASY通信
4月の新刊はマキリップ「馬事リスクの魔法の歌」。敵対する一族による殺戮と破壊を逃れた幼子が、長じて宿敵に復讐せんと挑むという、一見ありがちな筋立て、でもそこは名手マキリップ、一筋縄ではいきません。巧みな物語運びを縦糸に幻想と魔法を横糸に、意外性に満ちた見事なタペストリに仕上がっています。

東京創元社新刊案内3月は《こちら》にあります

 東京創元社 09年10月刊 桜庭一樹 製鉄天使

製鉄天使

製鉄天使

桜庭先生はライトノベルの方だったそうで、まあつまりはこういうフォルムを云うのだろうが、だったらそのノリでこちらセールスされたほうがよかったのでは。「仰天の快作誕生」と帯に記すほどのものではなさそう。
うーん…と、赤朽葉、私の男─となんだか変ではないかい?七竈でひとつの頂点を感じたけれど、あれで世界をつかんだって気分でこの先渡っていこうって大関日馬富士じゃないんだぞ。でも“犬です”よかったよね。
まあ、もちろん暴走族という人たちとわたしは殆ど交渉はないけれどだからといって、バイクに乗って鳥取県の人が広島だの山口まで夜中走って喧嘩してまた朝までに帰ってきてなんていう、でもそれがいわゆる青春かな?

不運にも花火(※人名、特攻隊長)とタイマンはるはめになった敵チームの特攻隊長は、恐怖にさらされて、年がまだ十五でも、十六でも、いわゆる引退年の十九と同じぐらい、一瞬で大人になってしまいそれきりハイウェイを一メートルでも走らなく安った。ある者は、学校指定の黒い鞄に、三折靴下、真顔で簿記や算盤の授業にも出て、資格でも取るかと、眩しい朝の世界に踏みだした。ある者は突然美術部に入って、油絵の具で狂ったように花瓶の絵を描きだした。「東京の美大に進学したいんじゃけど、どうじゃろか…」少女の胸に燃えていた走り屋の魂は、朝日とともに消える蜻蛉の姿のように、夜毎、はかなく潰されていった。
 三章 スーパー・デリシャス・アイアン・ガール 冒頭付近より

うーん、やっぱり鉄を自在に操る少女と、暴走族の生態ドラマといっしょで読者を乗せようっていうのは、もうすこし小説技法が必要ではないのだろうかと。