『映画、柔らかい肌。映画にさわる』を読む


 街路樹の枝垂桜(しだれざくら)が満開になっていた。
 淡い紅色で白色っぽい花弁(はなびら)である。
 枝先が垂れ下がっている。
 芥川龍之介の俳句に、「夕闇や枝垂桜のかなたより」。


 今月(3月)の新刊で、金井美恵子著『映画、柔らかい肌。映画にさわる』を読む。
 金井美恵子エッセイ・コレクション[1964―2013] 4。
 山田宏一による、金井美恵子への最新ロングインタヴューがある。
 映画論が展開されているのだが、ジャック・ロジェを論じている箇所に注目した。

金井 (中略)・・・『オルエットの方へ』も『メーヌ・オセアン』(八六年)も、海と船が出てきますよね。若い時に見ていたら、ロメールより好きになっていたかもね。ジャック・ロジェはもっと溌溂としてるよね。
山田 なにしろ、六十歳になって、一九八五年に『メーヌ・オセアン』を撮って新人監督に与えられるジャン・ヴィゴ賞を貰うくらいですからね。溌溂とした若さは持ち続けたけれど、評価がいかにも遅れたんですよね。若い時はジャン・ルノワールの『フレンチ・カンカン』(五四年)の助監督見習いだった。大学生の頃だから、ボランティアの見習いだったらしいけど、ジャン・ルノワールからいろいろ学んだんだろうな。 
 そういえば、ジャック・ロジェの『アデュー・フィリピーヌ』にも海と船が出てきますね。
 夏のヴァカンスをコルシカ島で過ごしていた若者に兵役の通知が届き、出頭日に間に合うようにと船で島を離れる。アルジェリア戦争の頃の物語でした。