元・容疑者
今日は、繁昌亭に元・容疑者を見に行きました。御存知、可朝師匠です。約一年ぶりですか。お目にかかりました。相も変わらず、カンカン帽にチョビ髭に、メガネでゆらゆらとお出ましになりましたがな。
「いやぁ〜、ホンマにようこそいらっしゃいました。」
「いよいよ、選挙ですな。そやけど、自民党も民主党も貶し合いばっかり。あれはええことおまへんな。わしはどっちが(与党に)なってもええ思うとるんです。そういうわしかて、全然、選挙を知らんわけやおまへんで(会場爆笑と拍手)。公約は“可朝が通ったら、一夫多妻制の実現と風呂屋の男湯と女湯の仕切りを外します”言うたんや。そしたら世間から顰蹙買うてしもて。」
「選挙に出たら、演説せなならんこと知らんかった。でも、恥ずかしいさかいよう喋られへん。選挙カーに乗っても恥ずかしいさかいに、高速道路を走っとった。そしたら前と後ろの車しか言うとることわかれへん。」
「わしの選挙カーの後ろに“指圧の心は母心”いうとったおっちゃんがついてきよる(註:浪越徳治郎のこと、同じ参院選に出馬した)。パーキングエリアに止めたら同じように止めるし、トイレに降りたらトイレにもついてきよって、気持ち悪いさかいに、浪越のオッサンに“何でわしの後をついてくるねん”いうて聞いたら“どこ回ってええかわからんので…”」
のんびりして時代やったんですな。
「楽屋に入ったら若いもんばっかりや。“ここ(繁昌亭)は古典落語をせなあかん場所か?”と聞いたら“そうです”いうもんやから今日は古典落語をやります。」
「今はお笑いブームとか言うとるけど、落語が一番ええんです。江戸落語よりも上方落語の方が優れとるんです。東京のネタもほとんど大阪から行っとるんですよ。」
ネタは大ネタ「次の御用日」。
漫談だけで終わるかと思いきや、古典落語の大ネタをたっぷりと。マクラは、可朝師匠の落語への愛着が感じられる、とてもストーカーなんぞやるような下品さはなく、むしろ、ほのぼのとした温かい雰囲気でした。中トリは25分らしいけど、選挙ネタやストーカー事件以降の謹慎中のことをネタに、さらに古典も演って大幅に超えたようです(笑い)。
中入り後は、コンパクトにまとまり、トリは笑福亭の名手・松喬師匠「花筏」でお開きと相成りました。巷での評判はどうか知らんけど、落語家としての可朝師匠はいいです。一遍聞いてみると、「また聞いてみたい」そう思いまっせ。
<7月30日 繁昌亭昼席>
- さん都 「子ほめ」
- しん吉 「桃太郎」
- 遊喬 「看板の一」
- AKO 「マジック」
- 団朝 「短命」
- 可朝 「次の御用日」
- 中入り
- やすし 「腹話術」
- 福郎 「手水廻し」
- 三金 「お忘れ物預かり所」
- 松喬 「花筏」