今回は朝日新聞から

あと4年で耐用年数が切れる南極観測船「しらせ」の
後継船建造の予算は、20日示された財務省原案に盛
り込まれなかった。
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財務省はゼロ査定の理由として、(1)現在の財政
状況では、搭載しているヘリコプターの後継機製造
費と合わせ総額520億円は巨額すぎる(2)耐用年数
が切れても運航している船もある――をあげた。
(アサヒコム03/12/20付け記事)

政府として、このような直接お金にならない科学分野は興味がないのかな。こういう基礎科学が先端科学を支え、先端産業を支えているのにね。

ところで、520億円は高いのでしょうか、ちょっと調べてみました。要求額の内訳は総合科学技術会議にある資料によると南極観測船「しらせ」の後継船建造費が400億円、搭載ヘリコプター後継機2機が120億円となっています。これらの予算ははたして妥当なのでしょうか?。詳しい見積書がないのでわかりませんから、近い機能を持ったものから考えてみましょう。

まずはヘリコプターから。資料によると物資輸送力の向上を目的としているようなので大型輸送ヘリコプターについて調べてみます。「航空の現代」に掲載されている資料によると英ウェストランド社と伊アグスタ社が共同開発した現役ばりばりの民間大型輸送へり、EH-101の価格は1800万ドル、約21億円。これが2機でも42億円です。特別装備を考えて倍の費用がかかっても約80億円。要求額の3分の2にしかなりません。

それではしらせについて調べてみましょう。砕氷船の価格なんかわかりませんから、近いクラスの大きさの船について調べてみます。まずはフェリーでは「宮崎港についてのよくある質問」によると1万トンクラスのフェリーで40億から50億かかるそうです。続いて客船では、89年就航の日本船籍では最大級の客船となる「ふじ丸(2万3千トン)」で80億円だそうです。ついでに400億円かけて豪華客船を建造するとどのくらいの客船ができるかというと、日本郵船の米国子会社クリスタルクルーズが約3億5000万ドル(約420億円)で発注した約68,000総トンの豪華客船「クリスタル・セレニティ」が該当するかな。しらせのような砕氷船が普通の客船やフェリーと比べてどのくらい余分に費用がかかるかわかりませんが、ふじ丸が5隻も作れてしまうことはないでしょうね。

こうして調べてみると予算はずっと絞れるのではないでしょうか。財務省は高すぎるということでゼロ査定するのではなく、文部科学省にもっと予算を絞るように指示することができなかったのかな?。