2013年に読んだ本あれこれVol.1

今年はあまり沢山は読むことができなかったけど、今後も繰り返し読み返したい素敵な本に何冊も出会えました。来年もどんな本に出会うか楽しみでござんす。

◯小説関連
小説は、文句なくこれでした。

ローラン・ピネ『HHhH プラハ、1942年』
評判通り、むちゃくちゃ面白かった。たんなる歴史小説ではなく、歴史小説がどのように生まれるか、それを書く作者の意識とはどのようなものか、歴史がまさに言語として立ち現れてくるその瞬間に読む者が遭遇する・・・。多少入れ組んだ構図になっているけれども、とても読み易く、かつ真摯な歴史倫理を主題とする本書は、稀有な傑作。今年はこれ以外に一位にはなりえない。

あとヘンテコリンな「小説」というのかなんというのかよくわからんけど、これ↓

デイヴィット・マークソン『これは小説ではない』
実験小説(前衛小説?)の部類のなのか、よーわからんが、とにかく奇書。中身はとにかく自分の目で確かめてみて欲しいのだけど、とにかく意味不明な本(小説と呼ぶのはダメなのかもしれん笑)。でも、なんだかよくわからないけど、ドンドン読んでいってしまう。結末において何かわかるのかしらんと思って読み進めても、唐突に終わってしまう。いや、「唐突」というのは、こちら読み手の力の問題なのかもしれんが、とにかく意味不明すぎて逆に面白くなってくる。こんなもの初めて読んで、ある意味で衝撃を受けたので。評論や批評を待つところ。

◯芸術/美術関連

本書を映画本とするのは、正確ではないのかもしれないが、ゴダール『映画史』から始まりマネを読むフーコーマラルメキットラーとメディア論、ストローブとユイレなどについて言及していく。とても面白い。なかでもキットラー並びにメディア(史)論的な歴史認識が、デリダが批判する「現前の形而上学」を密輸入しておりそこに無頓着というか、キットラーとメディア(史)論の「杜撰さ」があると批判する箇所はとても面白い。ついぞ積んどく状態のままとなっているキットラー『グラモフォン・フィルム・タイプライター』をいい加減に読まないとな、いや読みたいなっと思った次第(あとデリダ『声と現象』)。それともう一度、ちゃんと『映画史』も見返したい。


ニコラ・ブルネーズ『映画の前衛とは何か』
そもそも「前衛」とは何か?というところから議論を起こしながら、前衛映画史をとても簡潔に述べつつ、その特徴や特性、そして前衛映画が含みもつ「可能性」を抽象的な話に陥ることなく記述する、とても良書だと思う。映画のリストも載せてくれているのが、素晴らしいのだが、実際にどれぐらいの作品を日本で見ることができるのか・・・。前衛映画祭とか面白そうだな、見に行きたいなと思った次第。日本人監督による映画も多く紹介されている。


今年はフランシス・ベーコン展があったからであろう念願の復刊。ベーコンの絵画はもちろん素晴らしく、大好きなのですが、彼の仕事をある意味では規定しているともいえる、そのメディア史的な認識は大変興味深く、それがとてもよく現れているように思えるのが本書。
是非とも一緒に読みたいのが、やはりドゥルーズ『感覚の論理』。「形態、輪郭を救い出すこと」ことがベーコン絵画における一つの目的であることを喝破するドゥルーズによるベーコン論は、具象絵画でもなく抽象絵画でもない、その中間項に屹立するベーコン絵画のなかに、ドゥルーズ自身の哲学的実践を感じ取ったということでしょうか。。。