A Dog Year

 偶然" A Dog Year: Twelve Months, Four Dogs and Me "( Jon Katz )という本が映画化されるという話を見つけた。作者はジョン・カッツ。

A Dog Year: Twelve Months, Four Dogs, and Me

A Dog Year: Twelve Months, Four Dogs, and Me

 著者は子供の頃から犬と暮らし、犬のことは平均以上の知識を有する人物である。しかし一匹のボーダーコリーとの出会いが、彼の生活や物の見方を大きく変えることになる。彼の名前はデヴォン。2才の雄。ただし、この犬はいわくつきの問題犬だった。
 デヴォンと出会った時、著者はボーダーコリーを飼いたいとは考えていなかった。当時、6才と7才のイエロー・ラブ二匹を飼っていて、一人と二匹は見事に調和した、平穏そのものの生活を送っていたからだ。二匹は"Running Out to the Mountain"にも登場するが、著者の生活リズムやスタイルに完璧に適合していた。それ以上に、著者には精神的な安らぎを与える存在だった。そんな時に、この本を読んだ、あるブリーダーが著者に連絡してきた。「貴方にぴったりの犬がいます。」
 著者は、ボーダーコリーについて全く無知だった訳ではない。そして、このブリーダーは最初からデヴォンが抱える問題をはっきりと示し、決して押しつけることなく、非常に辛抱強く説明を続けた。ブリーダー曰く「この子には自分の居場所が必要なんです」結果、著者はデヴォンを引き取ることになり、これが「犬に縁のある特別な一年」の始まりとなった。
 デヴォンは、非常に頭の切れるが神経質で興奮し易い傾向があり、感情面で問題を抱えていた。非常にプライドが高く鉄の意志を持ち、その一方で、孤独であり敗北感に苛まれていた。著者と出会うまで、自分の居場所や心を通わせる人間に巡り会えず、服従訓練のトライアルに出場するも、そこで大きな失敗を犯してブリーダーの元に戻される。失敗したことは、本人(犬)も理解しており、心の大きな傷になってしまっていた。
 人間に従うことを学ばずに大人になってしまった犬と、信頼関係を築くのは難しい。ましてや、今まで人間に叱られて(体罰を含め)育てられた犬に、新しい飼い主を受け入れさせ、その権威を認めさせるのは至難の業である。また、ボーダーコリーという特殊な犬種ゆえに「仕事」を与えなければならない。この犬は、ニュージャージーの都会で、また一般家庭の平均的な広さの庭で飼うには余りあるエネルギーの持ち主だ。散歩に出ればスクールバスを追いかけ、走行中のミニバンに飛び乗る。家で留守番をさせれば、冷蔵庫を開けて密閉プラスチック容器に入った鳥肉の盗み食いをする。脱走する時は、逃走経路の隠蔽工作までやってのける知能犯だ。常に飼い主が側にいて、注意を払わなければならないHell Dog(悪魔の犬)なのだ。
 著者は、試行錯誤を繰り返しながら、少しずつデヴォンの信頼を勝ち取っていく。その間に先住のラブとの悲しい別れがあり、もう一匹のボーダーコリー、ホーマーとの微笑ましい出会いがある。(先のブリーダーの策略か、送ってきた写真を見て一目惚れ。デヴォンが落ち着き始めてきた時期だったので、どうしようか悩み続けた挙げ句、アメリカの「みのもんた」オプラ・ウインフリーに相談したところ、「飼いなさいよ、自分を満足させなさい」と言われ、飼うことを決意した。)
 この本を(あ)が面白いと思ったのは、ボーダーコリーのしつけ方や育て方が書いてあるからではない。この本は飼い主個人の心の内を描いていて、そこここに「自分」を発見するからだ。そして犬と真剣に向き合った一年を通じて、著者が得たことに共感できる。二匹のラブとの平和で穏やか、見事に調和の取れた生活は、一年を経て、二匹のボーダーコリーとの平和な共存に変わっていく。ちなみにデヴォンは、トラウマから解放するために、最終的に改名されて「オーソン」となる。
 ルーシーが我が家に来て、今月で1年になる。私たちが過ごしたこの一年は、やはりa dog yearと言えるだろう。著者と同様に、ルーシーを飼い始めたために、あきらめた物もあったけれど、それでも得たものの方が大きい。そして、この一年をなんとか無事に乗り切ることができたのは、周囲で励まして下さった皆さんのご協力のおかげです。心からお礼を申し上げます。
A dog year !
 なお、この映画はジェフ・ブリッジスが主演するそうだ。(あ)の記憶が正しければ、ジェフ・ブリッジスって、高倉健みたいな俳優じゃなかったっけ?演技がうまいんだか、ヘタなんだか、よく分からない。トム・ハンクスだったら良かったのに!!