神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

31年ぶりの貿易赤字に

macky-jun2012-01-25

  31年ぶりに我が国の貿易収支が赤字になったという。記録的な円高の為せる業であるが、それ以外にも3・11の大震災、10月のタイの洪水でサプライチェーンが分断したことの影響が大きい。
 欧州危機による欧州向け輸出の減少、また中国の最大の輸出国は欧州であることから日本→中国→欧州という三角貿易の減少という要因も大きいようだ。景気が悪い中で、唯一スマホ関連が元気がいいが、このことが生産地中国からの輸入増ということとなり、貿易収支ではマイナス要因にもなっている。
 前回赤字となったのは1980年のことであり、私がまだ大学生であった遥か昔である。79年からの第2次石油ショックが赤字要因となった。85年のプラザ合意以降、円高が恒常的に続いたにもかかわらず、貿易収支の黒字が定着化していった。むしろ、31年間にも亘って貿易黒字を続けてきたことに驚きを感じた方がいいのかもしれない。
 今後どうなるのかについては不透明感が強いものの、明るい材料は乏しい。原子力発電の停止に伴い、火力発電へのシフトでLNGなどエネルギー輸入が増加する見通しであり、欧州債務危機が続けば輸出動向も依然厳しさが続く。産業構造も空洞化が進んでおり、そうなると貿易収支赤字基調は定着する可能性もある。
 我が国は貿易赤字となっても、海外からの配当収入等の所得収支の黒字があり、直ちに経常収支が赤字になるわけではない。しかし、貿易赤字の幅によっては所得収支の黒字を上回りかねず、日本経済センターは2017年には経常赤字に転落すると予測している。膨大な財政赤字に加え、唯一の強みであった経常収支まで赤字になったら、いったい我が国はどうなってしまうのだろうか。
 欧州債務危機では経常収支が市場の評価を決めた。経常黒字のドイツやオランダは問題なかったが、経常赤字のイタリアやスペインの国債利回りが急上昇し信認を失った。日本の国債は90%以上が国内消化されている為、財政赤字でも問題ないと安心しきっている。しかし、経常赤字になったら資本逃避が起きる恐れは否定できない。そうなれば、我が国とてギリシャやイタリアやスペインの轍を踏むことはありうるのだ。
 写真は仕事始めに初詣に出かけた神田明神です。商売の神様が守ってくれるだろうか。