株式会社オロ

優良企業視察バスツアーの続きです。

前回はコチラ:http://d.hatena.ne.jp/maeda0901/20090424/1240577999



※私はこのバスツアーにはいっていません。なので全て聞いた話ってことでお願いします。

株式会社オロ(http://www.oro.co.jp/)はウェブ系、システム構築、パッケージソフト開発などを行っているソフトウェア開発会社です。10年で年商10億達成、ここ5年くらいずっと増収・増益を続けているという優良企業です。

ロゴマークがかわいいw

 うーん、素晴らしい会社ですね。ぜひ見習いたい…。


経営戦略は明快で、「伸びる領域」にしか手を出さないし、「No.1をとれるところまでセグメント分け」するというのを徹底しているようです。
(そういえば、船井総研コンサルタントの方も同じようなことをいっていました。落ち目の業界からコンサルティングの依頼が来ても断る場合があり、これから伸びていくだろう企業・業界に集中してコンサルティングをするんだとか。そこに商売の本質を垣間見た気がします。)

これは別に目新しい戦略でも何でもなくて(よく言いますよね「選択と集中」とか)、それを実践して欲張らずに排除すべきものを排除しているところが高利益と好循環を支えているのでしょうね。頭でわかっていても、実践するのは非常に勇気がいることだと思います。


ちなみにWebサイトの構築についても、プランナーとコンサルというところで強みを発揮するようにし、区分としては大企業向けのコーポレイトサイトの案件のみを追っているそうです。そういうようにセグメントを規定して類似の開発を繰り返すからこそ、品質も効率も向上して「No.1」を目指せるのでしょう。


この会社の主力製品に「ZAC」というERPパッケージがあります。この製品にはかなり力を入れているようで、なんと都合4回ものスクラップ&ビルドを行ったそうです。顧客もついているし、主力でもある製品を作り直すというのはかなりの勇気と財務力がいるのですが、技術者が納得できるかどうかにこだわったもの作りをしたからこそ、今の順調な受注があるという話です。

この会社の大きな特徴として、上記「ZAC」を社内でも利用して徹底的な原価管理を行っていることがあげられます。ちょうど設立4年目、社員数が20名くらいの頃から使い続けているようですが、この原価管理の徹底度は半端じゃないです。すべての従業員は15分単位で作業項目を入力します。どの案件に対してどのような作業項目を行ったのかをすべて記入します。もちろん営業担当者もだそうです。

その結果何が起こるかというと・・・、ボタン一つで案件ごとの予実管理がしっかり把握できます。プロジェクトとして成立しなかった案件の赤字額(営業コスト)も厳密に管理できます。間接コストも含めてすべてが可視化されます。毎朝全員でやっている朝礼の年間コストや大掃除のコストも一目でわかります。


そしてこのツールをそこまで使い込むと徹底したコスト意識が身につくそうです。人が動くということはコストが発生することであり、どんな作業でもコストが発生するという見識をもてるということです。オロさんでは1人の単価の平均は4,062円/時間だそうで、例えば誰かに蛍光灯の交換をお願いするのでも、その作業コストをきちんと計上することになり、このコストが業者に頼むコストより高いのであれば、業者に頼むという判断をすることにより、コスト削減が実現できます。


徹底的に管理していれば、上の例のようにある業務を社内でやるべきか社外でやるべきかの判断の際にも正確な経費の差を把握でき、コスト削減につなげることができます。赤字のプロジェクトであれば、どこが赤字になったのか、予実の乖離の激しい項目を追うことで問題点の分析が的確になり、赤字プロジェクトを減らすことができるのでしょう。


そしてこの徹底した原価管理で得られたデータは社内での活用だけでなく、赤字になりそうな案件も明確な根拠を伴った数値で予想できるので顧客への交渉にも使えるそうです。実際にこの数値を使って原価を説明し、案件の予算をあげてもらうこともあるそうです。

そして極めつけは、このZACから出力されるデータを使って経費精算もできるし決算にも利用できるそうです。実際オロさんは100人ほどの会社ですが、経理担当者は兼務者が1人だけで、後は外部の会計の専門家と契約してるだけだそうです。普通じゃ考えられないですよね。


ここまで徹底できれば、得られるメリットはかなり大きそうですが…、真似をしようと思っても、そう簡単に社内に浸透させられない気がするのですが…。ただ単にやってみよう!などという甘い意識では、中途半端な結果に終わるだけでしょう。
実際、そういう中途半端な原価や予実を管理している会社は結構あると思います。勘定項目に落とし込めるように日々の業務の項目をしっかり規定して、入力者が入力時にどの作業項目を選べばよいか迷わないように整理する必要もありますし、案件の作り方・分け方もしっかりとルール化する必要があります。


また、ルールがしっかりできても、入力する方が慣れるまでは相当の負担になるでしょうから、徹底した意識付けが必要になるでしょう。
こういった段階をクリアするのはかなりの労苦とは思いますが、運用が確立してしまえばかなり強力なツールになるでしょうね。ただ20〜30名以上の会社からでないと費用対効果の面でデメリットが多くなってしまうかなという感じがしています。

また、赤字・黒字がほぼリアルタイムでしっかり見えるので(全社員にほぼオープンにしているそうです)、特にリーダーレベルのプレッシャーは相当なものだそうで…。プロジェクトの赤字が続く状態だとやはり会社にもいづらくなるし、リーダー業務からの降格を申し出てくる人もいるようです(これも普通じゃなかなか考えられないような)。でもこれはデメリットというより、プロ意識の向上につながっていると考えられなくもないですかね。


これだけ厳格に管理をしている会社なので、評価は全て数字で決めていそうな印象を受けるのですが、実際はそうでもないようです。

オロさんはとても理念を大事にする会社で、評価の20%は理念という軸で決めるそうです(予想外デス)。また、ソフトウェア資産の蓄積ということには非常にこだわっています。ソースコード著作権をもてないプロジェクトは一切受けないんだとか。また、予実管理は徹底してやりますが、投資プロジェクトと判断したものについては、利益は一切追わないそうです。それほど技術資産というものを大事にしています。やはり技術屋としてそこは譲れないところですね。

そして、夢は「From Japan to "the World"」だそうです。もちろん夢の段階でまだまだ全く届いていないそうですが、この夢には激しく共感を抱きます。
どうも近頃の製品の多くは、海外製品をローカライズして販売、みたいなことをやっている会社が多い気がします。悪いことではないですが、資源の無い国だからこそ、技術で身を立てているわけで。日本の技術を世界に広めたいと考えているわけです。

ちょっと話が逸れましたが…。株式会社オロ、かなりイケテル優良企業です。ソフトハウスとして参考になる部分はかなり多いですよ。