おかえりなさい「はやぶさ」

 「はやぶさ」が帰ってきた。旅の詳しい内容は他の記事に譲るとして、7年間の旅に本当にご苦労様と言いたい。
 昨夜、22時過ぎには他のことに手がつかなくなり、パソコンの前に陣取った。ニコニコ動画につなげてみたが、既に人多すぎとのことでつながらない。そこで和歌山大学のチームが現地から実況してくれたUstreamを見ることにした。
 待つこと30分、ついに落下する「はやぶさ」の姿が映し出された。思ったよりもはるかに明るく輝く光球となって空を横切り、消えていった。その瞬間、家族全員で声を上げていた。(実は家族全員でモニターを眺めていた)
 和歌山大学の画像は明るい光だけだったが、他の方が詳細な動画をアップしてくださっていた。そちらより転載(NASAのDC−8が空中で撮影)↓

 落下する「はやぶさ」(右下の光点が回収カプセル)↓

 「はやぶさ」はバラバラになりながら燃え尽きていった。しかし、直前に放出された回収カプセルは明るく輝きながらオーストラリアの砂漠へ落下していった。このカプセルは今日にも回収されるという。
 回収カプセルには「イトカワ」のサンプルは入っていないかもしれないという。しかし、「はやぶさ」は「イトカワ」と往復したことだけでも十分だと思うし、できるならサンプルを持ち帰ってその任務をやりとげさせてやりたい。
 これだけ困難に見舞われる中で小惑星との往復をやりとげた衛星はないし、これからも恐らくわずかしか出ないだろう。いや、今後、二度と出ないかもしれない。現状の予算の少なさや、事業仕分けのなりゆきでは、宇宙開発には今後予算は出ないかもしれない。
 しかし、直接的な利益が出ないからといってこうした高度技術開発を止めてしまってよいものだろうか。高度技術開発は、確かにそれだけでは利益は生まない。結果として、票にもならないから、議員たちも冷淡になる。
 しかし、そんな近視眼的なものの見方だけしていて良いものだろうか。「はやぶさ」はアメリカ・ロシアの宇宙開発予算に比べたら笑えるほど少ない予算で実施され、成果を挙げてみせた。それは日本の技術力が世界第一級であることの証明ではないのか。もちろん、7年前の技術ではある。しかし、7年間という長い期間、過酷な宇宙空間で機能を発揮しつづけた衛星と、それを支え続けた技術者たちは世界に誇れるものではないのか。米・ロの宇宙開発は軍事技術開発という側面を持つため膨大な予算が付く。それに対して、日本の宇宙開発は純粋に民間技術なのだ。これはもっとアピールして良いことだと思う。そのことがどれほど日本のイメージアップに繋がっているのか、少しは想像してみるべきだろう。

 それにしても・・・。
 何で日本のTV局は「はやぶさ」の帰還を実況しなかったのだろうか。NHKは現地にスタッフまで派遣してハイビジョンによる映像まで撮っていたというのに。それなのに、その画像を月曜の午前1時のニュースで流していた。だったらなぜ実況をしない?せめて教育TVで特番を組むくらいしても良かったではないか。通信回路がプアだったから?そんなことは言い訳にもならない。通信衛星は何のためにある?
 何より、イギリスのTVでは実況中継をしていたのだ。イギリスのTVが実況をして、何で当事者である日本が実況しない?
 何やらキナ臭い思惑まで感じさせられてしまう。そこまでして日本を貶めたいのか?日本のTV局は。それはまあ、考えすぎだと思うが。
 しかし、TVによる実況がないため、実況を見たい者はネットの実況を見るしかなかったのは事実である。ニコニコ動画はあっというまに満員になり接続不可になった。和歌山大学の実況は接続者が多かったせいか、カクカクの動画になっていた。(それでも輝く光球ははっきり見えたが。)接続者は、おそらく20万人を越えていただろう。別にサッカーのワールドカップが悪いわけではない。おそらく、TV局はワールドカップの放映権を得るために大金を払っていたのだろう。それを回収するためにはワールドカップを放送するしかなかったのかもしれない。
 しかし、である。ワールドカップは本当に視聴者が見たがっていたものなのだろうか。そして、「はやぶさ」を見たかった視聴者がこれだけいたという事実は否定できないだろう。TVからの視聴者離れが言われているが、当たり前だと思う。TV局は視聴者が見たいものを放送していないのだから。TV局は猛省したほうが良い。いつの間にかTV局は視聴者を置き去りにした、もっと言えば馬鹿にした番組作りしかしなくなっているのだ。これでは視聴者から見限られても仕方ないと思う。それなのに、まるで視聴者が悪いような言い訳をするのだろうか。
 
 TV局を責めても仕方ない。とにかく、TV以外の方法で「はやぶさ」が帰還する姿を目にできたことは喜ぶべきことだろう。
 「はやぶさ」は大気に突入する直前、再突入カプセルを切り離してから地球の姿をカメラに写し送信してきた。

 かすむ地球の姿は、「はやぶさ」のカメラが涙で曇っていたようにも見える。その涙は悲しみの涙ではなく、喜びの涙であったと思いたい。