ダブルブリッド Drop Blood/中村恵理加/電撃文庫

ダブルブリッド―Drop Blood (電撃文庫)


今年5月に完結した『ダブルブリッド』短編集。4篇は『ダブルブリッド・ビハインド』と称して電撃hpに掲載。3篇は書き下ろし。たけひとのイラストが『ディスガイア』みたいにデフォルメが利いたものになってるのは、外伝だからということで意識してやってるのかな。


Dead or Alive:2001年5月発売の電撃hp Volume11掲載。太田主人公。彼の話をあんまり長ったらしく感じないのは、文章が整理されてて読みやすいからだろうか。


Momentary Happiness:2005年10月発売の電撃hp Volum38掲載。安藤さんと虎くん主人公。火傷した女の子がうなさながら見るのが焼肉の夢って辺り、やっぱり恵理加ちゃんは違うなあ。でもあとがきで作者自ら獣姦がどうこうとか言い出すのは自重しましょう。


汝の隣人は燃えているか:2008年1月発売の電撃文庫マガジンVol.1に掲載。。夏純主人公。この巻の中で一番好きだ―。かっこいいお姉さんな外見なのに中身は11歳って素敵やん?夏純の趣味とか部屋の様子は、恵理加ちゃんのそれをそのまま書き写してるようにしか感じられなかった。食事シーンとか地理的なこととかもそうだけど、恵理加ちゃんって自分が経験したことのない風景を描写するのを避けてるようにも思える。


こどもらしくないこどものはなし/こどもらしくないこどもにすくわれたはなし:前後編?前者は2007年10月発売の電撃hp Volum50に掲載。後者は書き下ろし。子どもの片倉さん主人公、と聞いて以前付き合ってた野郎の話をするのかなーと思ったけど、そうではなかった。残念半分安心半分。言いたいことを言っておけず後悔した話と、言いたいことを言いはしたけれどもっと話したかったことがたくさんあったのに、と後悔する話。片倉さんver.小学生に踏まれたい。


こどもらしくないこどもとぶこつなおにのはなし:書き下ろし。飯田さん主人公。浦さんド変態!飯田さん可愛い!


続いた世界の顛末:書き下ろし。山崎太一郎という生き物主人公。作者があとがきで語っているように明らかに蛇足ではあるけど、読めてよかったと思う気持ちも否定できず……。ところで、山崎太一郎って名前が新井素子作品から取られているのというのがどれだけ本当かは分からないけど、新井素子ナチュラルにホラーっぽい部分をもっと分かりやすいものにして(悪く言えば)青臭さ≒説教くささを抜いてゲーオタ分を足したら中村恵理加ができあがる気はした。ってそれもう新井素子でもなんでもないか。……新井素子云々は別として、自分の苦手な女性作家っぽさが全然ないんだよなあ。女性作家っぽさってなんだ、と聞かれたらうまく言葉にできないけど、少年向けレーベルではたけゆゆと並んで実は男でしたーって言われても信じてしまいそう。いっぺんこの人を少女向けレーベルに放り込んで好き放題書かせてみたい。


まとめ。アヤカシ、という存在に対する作者の愛着が感じられる短編集でした。シリーズ序盤はこういう雰囲気がずっと続くものと思ってて、期待もしていた通りのイメージ。こういう知性を持った人外を描くと、少なからず今の人類に足りない部分が反映され、変に理想化されてしまうこともあるけど、そこら辺の嫌味があまり感じられないのもよかった。まあ、それは逆にいえば六課の面子はみんな人間くさくて感情移入を阻害されなかったということで、「人とは違う存在」を描ききったかというと微妙な気もするけど。


しかし、AMWは雑誌に掲載された作品については、いい加減初出をつけてほしい。出版社を横断した著作リストとか載せるよりよほど大事なことじゃないのかこれ。今回初出情報を調べるに当たっては電撃文庫・電撃文庫MAGAZINEまとめWikiの雑誌掲載作品一覧がとても参考になったことをここに記しておきます。


ところで、恐らく電撃文庫一「幼女」という単語が多用される本作を読んでたら百合星式おゆうぎうたが脳内再生されたようじょ。ナオコサン2巻マダー?