美しい悪夢

百年文庫で未知の作家を知る楽しみ…
今回は、ロシアのワシーリイ・エロシェンコ。作家について何も知識のない読者にとって、巻末の「人と作品」はありがたい。平明で簡潔な文章の中に作家の輪郭を浮かび上がらせる書き手の手腕にいつも感心させられる。
盲人であったエロシェンコの口述筆記を手伝った一人、秋田雨雀は「エロさんの童話は美しい悪夢のよう」と語ったというが、「美しい悪夢」という評言は、この巻に収められた他の二人の作品(宮沢賢治の「革トランク」、与謝野晶子の「嘘」など)にも当てはまりそうだ。

(062)嘘 (百年文庫)

(062)嘘 (百年文庫)