中国戦国まんが「キングダム」(1〜40巻)を読む(感想)

・古代中国戦国まんが「キングダム」の40巻を読みました。第1巻をネットの無料配信で読んで、まんまと網にかかった読者でございます。

キングダム
原泰久著(2006〜)
集英社 ヤングジャンプコミックス

春秋戦国時代の中国を舞台に繰り広げられる壮大な戦国歴史ドラマ。
人を人とも思わずバンバンと首や手足や半身がぶった切られ、大殺戮シーンも少なくないのだが、第17回手塚治文化賞マンガ大賞を受賞、今時希少な、暑苦しくも血湧き肉躍る、どストレートな戦う熱血少年野望マンガ。1巻を手にしたら9巻まで休むことなく一気に読み進んでしまった。
それまで誰も成し遂げたことのない中華統一という野望を胸に抱く秦の若き王エイ政(後の始皇帝)と、下僕の身から天下の大将軍をめざす凄腕少年剣士信との友情を軸に、百戦錬磨の各国の武将、軍師が入り乱れて、戦闘を繰り広げる。
大望を抱きつつも終始冷静でクールな政と、常に前向きで血がたぎっていて圧倒的に強い信との2人の対照がたいへんよく、1巻ではローティーンだった2人が戦いの中、どんどん大人になっていくので、知り合いの子の成長をを見届けているような気持にもなる。
最新巻の第40巻は、「加冠の儀」により正式に秦の王となった政が、遂に、長年に渡って宮廷内で勢力争いを行ってきた宿敵呂不韋との決着をみる。発刊にあたり、集英社は発売日前日の日曜の朝日新聞朝刊に見開き全4ページ、第一話全編掲載の広告を載せるという、熱の入れようであった。
(※人名には見慣れない難しい漢字がたくさん使われているので、すぐに変換できない漢字はカタカナ表記にした。)

<秦に関わる主な人物>
(武将や兵士は書きだすとキリがないので、ここには載せない。)
:戦争孤児の下僕の少年。秦の大王エイ政の影武者となって死んだ親友漂の遺志に従い、弟帝成キョウの反乱により咸陽の都を追われた政の護衛にあたる。山の民と組んだ政陣営に加わり、成キョウ一派の撃退に一役買う。以後、剣士として戦場に趣き、最初の魏戦での功により百人将となり、「飛信隊」を率いる。数々の戦いを経て、千人将、三千人将、五千人将と、大将軍への道を進み続ける。
エイ政:秦の大王。幼いころ母とともに趙国に人質に送られたまま見捨てられ逆境にあったところを、忠臣昌文君により救い出される。13歳で三十一代目秦王となる。信と会ったときは15歳くらい。22歳で「加冠の儀」が行なわれる。
河了貂:山の民の一部族の生き残り。政が追われていたときに政と信と出会い、手を貸す。少年を装っていたが実は女の子。やがて、飛信隊の軍師となる。
キョウカイ:伝説の刺客一族「シ尤」(しゆう)の少女。緑穂(りょくすい)という剣を持つ。舞うような剣捌きは見た者を驚愕させ「人じゃねえ」と言わしめる。飛信隊副長。
壁(へき):昌文君の副官。成キョウの反乱のときに信と知り合う。信の初陣のときは千人将。
成キョウ:弟帝。舞妓だった政の母が実母に代わり正妃となり、政が王となったことで政を憎む。物語は、彼が起こした反乱から始まる。が、後、政に協力するようになる。
昌文君:元武官の文官。政の忠臣。秦の左丞相となる。
呂不韋:趙の商人から上り詰めた大権力者。秦の丞相から相国となり、表向きは若王である政を支える臣であるが、その実は国の乗っ取りを狙い、政と対立している。
昌平君:軍師。秦の右丞相となる。呂不韋の四柱の一人であったが、やがて政側につく。
楊端和(ようたんわ):山の民の中の最高勢力を持つ一族を統べる王。美女である。政と同盟を結ぶ。

<各巻の内容>
○1〜5巻前半:成キョウの反乱。信と政と貂の出会い。
○5巻後半〜7巻:秦対魏の戦い。信の初陣。キョウカイとの出会い。秦軍:ヒョウ公将軍、魏軍:呉慶将軍。
○8巻:政の過去。9歳のときの趙からの脱出の顛末。闇商人の女頭領紫夏の献身により、政は亡者の霊に取り憑かれ闇の中にあった心に光を見出す。
○8巻末〜9巻:咸陽宮廷内における政の暗殺未遂事件。刺客集団が勢ぞろいである。
○10巻:呂不韋一派登場。貂は、軍師となるため昌平君の元へ身を寄せる。
○11〜16巻:秦対趙の戦い。秦国六大将軍の最後の一人王騎と、「武神」を名乗る趙の異端の将軍ホウケンとの宿命の対決。信は百人将となり、王騎将軍により「飛信隊」という名を賜る。趙の軍師李牧登場。趙軍の女剣士カイネと貂の出会い。
○17巻:李牧の提案を呂不韋が受入れ、秦と趙が同盟を結ぶ。宮城の壁上で、政は中華統一のため5年後の「加冠の儀」までに態勢を整える決意を述べ、信にもそれまでに将軍になるよう促す。信と同世代のエリート部隊、王ハン率いる玉鳳隊と、蒙恬(もうてん)率いる楽華隊登場。
○17巻末〜18巻前半:第3の勢力、後宮太后登場。母である太后と政の確執。太后呂不韋の因縁。
○18巻後半〜23巻前半:秦対魏の戦い(秦の山陽攻略)。秦軍:老将蒙ゴウ、魏軍:廉パ将軍。廉パの片腕、輪虎将軍と信が対決。
○23巻後半:魏戦の後。信、千人将となる。河了貂、軍師となって飛信隊に加わる。信は、貂が女の子であることを初めて知る。
○24巻:趙対燕の戦い。楚軍登場。信と同世代の千人将、項翼、白麗。咸陽では、呂不韋が相国に、昌平君、昌文君がそれぞれ右丞相、左丞相となる。
○25〜32巻前半:秦対合従軍の戦い。合従軍は、楚、魏、燕、韓、趙の連合軍(斉は、秦の使者の交渉により離脱)。秦軍の将軍:騰(王騎将軍のかつての片腕)、ヒョウ公、蒙ゴウ、蒙武、王セン、桓騎、張唐。合従軍:楚:春申君、汗明、カ燐、魏:呉鳳明、燕:オルド、韓:成恢、趙:李牧、(カイネ、傅抵)。
 ・30巻:合従軍、函谷関攻めに失敗。
 ・31・32巻前半:咸陽の喉元、叢(さい)での攻防戦。「不抜」の二文字に感極まる。
○32巻後半〜33巻前半:キョウカイの復讐。
○33巻後半:キョウカイの帰還
○33巻末〜34巻前半:成キョウの反乱。成キョウは相変わらず尊大だが実は心を入れ換えており、反乱は仕組まれた罠である。成キョウの婚約者瑠衣登場。
○34巻後半〜37巻:秦対魏。著雍(ちょよう)の戦い。飛信隊は、兵五千の独立遊軍となる。秦軍:騰将軍、魏軍:呉鳳明将軍、霊凰将軍(魏火龍七師の一人)、凱孟将軍(がいもう。火龍七師の一人)
○37巻末〜40巻:太后が、太原(秦の北部)にアイ国を建国し、独立を宣言。政の「加冠の儀」が旧都雍にて執行される。時を同じくして、アイ国が反乱を起こし、咸陽に攻め入る。その裏には呂不韋の思惑もある。雍で政と呂不韋が政治談議を交わす一方、咸陽では秦軍とアイ軍が戦闘を繰り広げ、秦軍が勝利する。ここに長年に渡る政と呂氏の勢力争いが幕を閉じる。