mii06252005-06-18


ジェイムズ・ジョイスユリシーズ
第五章「街を行くヘンリー・フラワー」

 教会の鐘の音(ね)を聞きながら家を出たレオポルド・ブルームはダブリンの街をサー・ジョン・ロジャーソン河岸に沿ってまじめな顔で歩きつづける。

  • マッコイ

 レオポルド・ブルームはダブリンの郵便局で、女性郵便局長から局留めにしてあるブルームのハンドルネームである「ヘンリー・フラワー」宛ての若きメル友「マーサ・クリフォード」からのメールを受け取るが、ブルームはすぐには開かない。メールを開く適当な場所を探して街を歩くブルームはチャーリー・マッコイと出会ってしまう。マッコイに『僕の家内はコンサートで歌うよ』と言われ、『ぼくのモリーもだよ』と答えるブルーム。

  • マーサ

ブルームが掲示板で知り合ってメル友になった女性。マッコイと別れたブルームが開封したメールの最後にはこう書かれている。『P.S.あなたの奥さんがどんな香水をつけているのかぜひ教えてね。知りたいの。*1

  • ライアンズ

外風呂でさっぱりしようとするブルームは今度はライアンズと出会ってしまう。アスコット競馬場ゴールドカップ・レースの勝ち馬は?と聞かれ、新聞をライアンズに「捨ててくれ(スロー・アウェイ)」と言いながら、手渡すブルーム。

外風呂でさっぱりしながらブルームはこうつぶやく。
    「…、もの憂げに漂うひとつの花。」

*1:移り香で悟られないようにというマーサの作戦?

ドン・ジョヴァンニ

モーツアルトの三大オペラ、「フィガロの結婚」、「ドン・ドンヴァンニ」、「魔笛」のなかで、ぼくが一番音源を観たり聴いたりしているのは「ドン・ジョヴァンニ」である。なかでもドン・ジョヴァンニがツェルリーナを誘惑する、「ラチ・ダレラ・マノ」は女性を口説く歌としては絶品である。ボイランが今日の午後4時、愛妻モリーに持ってくるプログラムでもこの曲が歌われることになっているし、街を行くミスター・ブルームが御者が口ずさむのを聴くのもこの♪ラチ・ダレラ・マノ♪である。この曲の存在を意識させられて、ブルームはボイランが愛妻ミリーを誘惑することを痛切に感じるのだ。
このDVDは新装なったグラインドボーン・オペラでの映像。デボラ・ウォーナーの演出が素晴らしい舞台。