JGPブラエオン・シュベルター杯2016 女子SP

JGPブラエオン・シュベルター杯2016 リザルト
ジュニアのGPシリーズ第7戦。女子SPは、現地時間2016年10月6日(木)に行われた。

で、事前に注目していた選手の演技を中心に見たが、第5グループの途中までしか収録されていなかったので、あとは個別の動画で見た。特に印象に残った選手の演技について、滑走順に感想を書いている。

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●第1グループ
2 青木 祐奈(日本)

  • 楽曲:Meditation (from "Thais") by Jules Massenet

昨季、全日本ジュニア7位、全日本16位。今季、JGPチェコスケート4位。
昨季から持ち越しのプログラム、「タイスの瞑想曲」。
3Lz+1Tでセカンドがノーバリュー。3Loはクリーンに着氷。2Aは回転が足りないかと思ったが大丈夫だった。
スピンは全てレベル4。+2を付けているジャッジもいるのだが、これが+3になるにはどうしたらいいのかと、素人ながら考えてみた。ポジションも回転も素晴らしいので、あとは指先とか腕の動きかなぁ。そこがさらに美しくなると、+3を出してもらえるようになるのでは。
ステップはレベル3。+3を出しているジャッジが一人いるのだが、さもありなんという、素晴らしいステップだった。フリーレッグの美しさときたらもう! うっとり見とれてしまう。これが他の部分もそうなると、PCSもガンガン上がりそう!
プログラムは順調にブラッシュアップされている。あとはジャンプ! ジャンプだけ! ジャンプさえクリーンに決まれば、TESはもちろん、PCSも跳ね上がるはず!
56.47。

4 Holly HARRIS ホリー・ハリス(オーストラリア)

  • 楽曲:Se tu fossi nei (from "Cinema Paradiso" soundtrack) by Ennio Morricone

フィギュアスケートでよく使われる曲だが、女性ヴォーカルはめずらしい。
今季、ジュニアデビューで、今大会がJGPデビュー。とても愛らしく美しい選手。
3S+2TはOK、3Loはちょっとシェイキーな着氷だったからか、GOEマイナス。2AはOK。
スピンのレベルは4、3、3。わたしはスピンが上手な選手だと思ったのだが、最後のFCSp3は減点されていた。
ステップはレベル3。体を大きく動かして、曲想をよく表現していた。腕の動きが優雅で美しい。
48.18。

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●第3グループ
11 Eunsoo LIM ウンス・イム(韓国)

  • 楽曲:Besame Mucho

今季、ジュニアデビューで、JGPリュブリャナ杯4位。
全体的に、スピードがビュンビュン出ていた。そのスピードから跳ぶ3Lz+3Tは、2つとも幅がすごい。跳ぶ位置を気をつけないと、こりゃ壁ドンしちゃうわ。3Loも2Aも、流れと幅がすばらしい。リュブリャナ杯では、コンボで壁に近づきすぎて転倒してしまったり、ループで減点されたりしていたところを、きっちり修正してきた。
スピンのレベルは3、4、4。ここは全てレベル4ねらいだと思うのだが、彼女のスピンの上手さから言って、十分可能なはず。取りこぼしがもったいない。
ステップはレベル3。長い手足を存分に使って、曲想を表現していた。
セクシーな振付がいくつも入っているのだが、まったく艶っぽさが感じられないので、安心して見られる(笑)。健康的で明るくて楽しいプログラム。
キスクラに、クァク・ミンジョンがいる! 今はコーチをやってるのかな? もうすっかり大人のお姉さんだな〜。麗しや〜☆
63.83で、自己ベスト更新!

14 Elizaveta UKOLOVA エリザベータ・ウコロワ(チェコ

昨季、シニアの国内選手権4位、世界ジュニア37位。今季、JGPチェコスケート14位。
3Lo、3S+2T、2Aと、ジャンプは全てクリーンに着氷。全要素がGOEプラス。
スピンは全てレベル4。もそっと回転が速くなるといいなー。
ステップはレベル3。優雅さと力強さを出せていた。
全体的に、もっとスピードとシャープさがほしい。ちょっともっさりして見えるんだよね。
50.50で、SB更新!

15 Kristina SHKULETA-GROMOVA クリスティナ・シュクレタ‐グロモワ(エストニア

昨季、シニアの国内選手権3位、世界ジュニア29位。今季、JGPタリン杯12位。
3T+2T、2Loタノ、2Aと、クリーンに着氷。全要素でGOEマイナスなし。
スピンのレベルは4、4、3。スピンは独創的なポジションが見られたし、軸も回転も安定していた。
ステップはレベル3。ゆったりした曲想を丁寧に表現していたと思う。
43.43で、SB更新!

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●第4グループ
17 Sarah TAMURA サラ・タムラ(カナダ)

昨季、ジュニアの国内選手権優勝、世界ジュニア13位。今季、JGPリュブリャナ杯8位。
3Lz+2Tはクリーンに着氷。3Loはステップからただちに跳んでいないように見えたが、ジャンプ自体はよかったからか、GOE 0.00。2Aは高さがあったのだが、コントロールしきれず、着氷が乱れてしまった。
スピンのレベルは3、4、2。最後のLSp2は、回転がゆっくりになってしまった。
ステップはレベル3。姿勢やライン、ポジションがいまいちなのよね。ポーズがビシッバシッと決まると、かっこよくなると思うのだが。
52.71で、自己ベスト更新!

18 白岩 優奈(日本)

昨季、全日本ジュニア2位、JGPファイナル5位、ユースオリンピック4位、世界ジュニア4位。今季、JGPモルドヴィア杯4位。
3Lzで転倒し、コンボならず。3Loと2Aは流れと幅があった。
スピンは全てレベル4。ステップはレベル3。3Lzの転倒以外は全要素でGOEプラス。
…何がどう足りないのか具体的には説明できないんだけど、何かが足りない。でも、その何かが備われば、壁を突き破りそうな気がする。オシャレで小粋なプログラムをものにしつつあると思うので、あともう一息、頑張ってほしい。
54.60。

20 Alana TOKTAROVA アラーナ・トクタロワ(カザフスタン

  • 楽曲:What a Wonderful World by Weiss, Thiele

今季、ジュニアデビューで、JGP横浜11位。
3T+2Tのファーストでお手つき。2Loの前にさまざまなステップを入れて、クリーンに着氷。2AもOK。
スピンは全てレベル4。ステップはレベル3。
まだ難しいトリプルは跳べないのだが、エレメンツを行うだけで精いっぱいという演技でもなく、素敵な笑顔を浮かべ、音楽を表現しようとしていた。
テッドさんが、"Lovely performance"とコメントしてたけど、ほんと、その通りの演技だった。
43.35で、自己ベスト更新!

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●第5グループ
21 Yi Christy LEUNG イー・クリスティー・リャン(香港)

  • 楽曲:Hana's Eyes by Maksim Mrvica

今季、ジュニアデビューで、今大会がJGPデビュー。
香港代表だが、練習拠点は北京なので、今は中国選手と一緒に練習してるのかな?
3Lz+2Tタノは、ルッツが高かった。2Aと3Loはクリーンに着氷していたのだが、ループはGOEマイナス。ステップからただちに跳んでいないからだと思う。
スピンのレベルは4、4、3。レベル4は取れなかったが、最後のCCoSp3は、ポジションが美しく、回転も速かった。
ステップはレベル2。ミスはなかったと思うが、印象に残る動きがなく、何となく終わってしまったのが残念だった。
51.07。

22 Stanislava KONSTANTINOVA スタニスラワ・コンスタンティノワ(ロシア)

今季、JGPモルドヴィア杯でJGPデビューし、2位。
3Lz+3Tはクリーンに着氷。1Loはノーバリュー。2Aは着氷に流れがなかったからかGOEマイナス。
スピンは全てレベル4。+3も出るほど、質の高いスピンだった。
ステップはレベル3。激しい曲想にぴったりの動きができていた。
モルドヴィア杯のノーミスの演技ほど、迫力はなかったかもしれないが、それでも十分すばらしい演技だった。
59.00。ああ…コンさんがめっちゃ落ちこんでる…。

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●第6グループ
29 ディアナ・ニキティナ(ラトビア

昨季、ジュニアの国内選手権優勝、世界ジュニア10位。今季、JGPチェコスケート7位。
2Lz+3TはOK。3Loはクリーンに着氷していたように見えたが、GOEマイナス。ステップからただちに跳んでなかったからかな? 2AはOK。
スピンのレベルは3、4、1。ステップはレベル3。
ボディームーブメントに、「あら素敵☆」と感じるところはあるのだが、な〜んか、ちょっと元気なさそう。前のチェコスケートのときからなんだよなー。体調よくないのかなぁ?
47.72。

32 Lutricia BOCK ルトリシア・ボック(ドイツ)

昨季、シニアの国内選手権優勝、ユーロ25位。今季、JGPチェコスケート12位。
3Lz+3Tは、セカンドの回転が足りてるか心配だったけど、大丈夫だった。3Loは、ステップからただちに跳んでいないように見えたけど、GOEで減点はされてなかった。でも、マイナスをつけているジャッジがいる。2AはOK。高さのあるジャンプが跳べるのは、強みだよなー。
スピンは全てレベル4。ステップはレベル3。美しいしっとりした音楽が同じドーンで続くこともあり、やや一本調子な印象を受けた。
拍手代わりに太鼓叩いてるおじさんがいる(笑)。
地元で良い演技ができて、ボックさんも嬉しそう。そして、インゴ先生との麗しのキスクラ☆ 二人とも美しいので目の保養になるわ〜。
58.70で、自己ベスト更新!

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●第7グループ
33 Anastasiia GUBANOVA アナスタシア・グバノワ(ロシア)

今季、ジュニアデビューで、JGPチェコスケート優勝。
ぐっはー、すばらしいわ〜。うっとりだわ〜。
3Lz+3Tで、セカンドをステップアウトした以外は、全要素、申し分のない出来栄えで、GOEプラス。スピンとステップは全てレベル4。最後のCCoSp4は、白鳥みたいなポジションが入っていてかわいらしい。
流れの中に、全てのエレメンツが溶けこんでいるかのような、シームレスかつエフォートレスな演技だった。例外は連続ジャンプで、ここだけは、余計な力が入ってる感じ。
65.43で自己ベスト更新! ミスがあって、この高得点なので、ノーミスで滑ったら、70点近いスコアが出るだろう。

36 Annika HOCKE アニカ・ホッケ(ドイツ)

昨季、ジュニアの国内選手権2位、ユースオリンピック11位。バイオによると、ペアもやっているそうだ。今季、JGPモルドヴィア杯7位。
3T+2Tはクリーンに着氷。3Lo<は転倒。2Aは高くて大きなジャンプだった。
スピンのレベルは4、4、3。エッジやポジションを変えても軸がブレず、回転も速いままで、本当に気持ちがいい。
ステップはレベル3。軽快で明るい曲想をよく表現していた。
彼女は、演技中、失敗しても、疲れても、常に輝くような笑顔を浮かべている。これは得がたい才能だと思う。誰にでもできることではない。
47.37。

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◆SP順位
SPが終わって、順位は下記のとおり。左から順位、名前、国名、TSS、TES、PCSの順に記されている。

  1. Anastasiia GUBANOVA RUS 65.43 37.58 28.85
  2. Eunsoo LIM KOR 63.83 37.18 26.65
  3. Stanislava KONSTANTINOVA RUS 59.00 30.97 28.03
  4. Lutricia BOCK GER 58.70 34.38 24.32
  5. Yuna AOKI JPN 56.47 30.10 26.37
  6. Yuna SHIRAIWA JPN 54.60 29.19 26.41
  7. Sarah TAMURA CAN 52.71 28.96 23.75
  8. Yi Christy LEUNG HKG 51.07 29.49 21.58
  9. Elizaveta UKOLOVA CZE 50.50 28.99 21.51
  10. Holly HARRIS AUS 48.18 27.09 21.09
  11. Diana NIKITINA LAT 47.72 26.93 20.79
  12. Annika HOCKE GER 47.37 25.94 22.43
  13. Nina OUELLETTE USA 46.58 25.90 22.68
  14. Lea Johanna DASTICH GER 45.73 27.30 18.43
  15. Chiara CALDERONE ITA 45.61 24.73 20.88
  16. Shuran YU SGP 45.36 24.99 20.37
  17. Sophia SCHALLER AUT 43.98 24.52 19.46
  18. Kristina SHKULETA-GROMOVA EST 43.43 24.74 18.69
  19. Alana TOKTAROVA KAZ 43.35 24.24 20.11
  20. Hyang Mi RO PRK 43.05 24.85 19.20
  21. Valentina MATOS ESP 43.04 24.51 18.53
  22. Anastasia GOZHVA UKR 42.71 25.38 19.33
  23. Julia BATORI HUN 39.63 23.24 18.39
  24. Amanda STAN ROU 39.61 22.94 16.67
  25. Charlotte VANDERSARREN BEL 38.58 20.37 18.21
  26. Lu ZHENG CHN 36.77 21.34 15.43
  27. Haley YAO TPE 36.38 18.18 18.20
  28. Silvia HUGEC SVK 36.13 17.88 19.25
  29. Federica MAGNIFICO SUI 35.55 19.09 17.46
  30. Sofia DEL RIO MEX 35.38 17.73 17.65
  31. Juni Marie BENJAMINSEN NOR 33.60 17.66 17.94
  32. Agnieszka REJMENT POL 31.83 17.86 13.97
  33. Linden VAN BEMMEL NED 30.36 15.87 15.49
  34. Tania MARGARIDO AND 29.41 16.52 13.89
  35. Veronika SHEVELEVA KAZ 25.93 12.87 14.06
  36. Mara WAGNER LUX 25.81 13.64 12.17
  37. Abigail SAMUELS RSA 24.83 12.49 12.34
  38. Aina Sorfina MOHD AMINUDIN MAS 23.48 11.54 11.94
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◆総評
予想通り、SP1位はグバノワさん。あのシームレスでエフォートレスな滑りは、真凜ちゃんに勝るとも劣らないのではなかろうか。
2位はリムさん。今季JGP表彰台の日露独占を阻めるとしたら、彼女しかいないと思っていた。SP好発進で良い位置につけているが、どうなるか。
3位はコンさん。1戦目を見るに、FSがなかなかの難物プロだったので、どこまで仕上がっているのか、楽しみだ。
4位はボックさん。ユーロ勢は、現在ロシアに圧倒されており、他国の選手にもがんばってほしいのだが、彼女は3Lz+3Tが跳べる上に、たいへん美しいスケーターなので、期待している。
5位の青木さんと6位の白岩さんは、ジャンプでミスがあり、出遅れてしまったが、動きのキレを見る限り、調子は悪くなさそう。FSでの巻き返しが見られるか。