美少女ゲーム/ノベルゲーム/ビジュアルノベル/恋愛ADV

/* プロット1:http://d.hatena.ne.jp/milkyhorse/20060827/p1#c2-1 が初出 */
/* プロット2:http://rosebud.g.hatena.ne.jp/milkyhorse/20061114/1163514383 が初出 */
/* プロット3:涼元悠一「ノベルゲームのシナリオ作成技法」(ISBN:4798013994)103-105,124-126頁 */
/* 執筆意図1:あえて簡素な断定調の文章を書き下ろすことで,改訂のための叩き台とする */
/* 執筆意図2:詳細な知見は注釈として随時追記・引用することにし,本文の肥大化を防止する */
 

ノベルゲームの定義

 <ノベルゲーム>とは,音声*1・画像・文章を表現技法として融合的に用いるコンピューターゲームをいう。
 このノベルゲームは,文章表示領域の違いに応じて,ビジュアルノベル<恋愛ADV(恋愛アドベンチャーゲーム)>*2とに分かれる。
 

ビジュアルノベルとは

文章による叙述を画像と音楽で写実的に再現する例/「To Heart」(C)AQUAPLUS/Leafより/【マルチ】「だれかといっしょにお掃除するのって、こんなにも楽しいものなんですね。わたし知りませんでした」 前者のビジュアルノベルとは,ノベルゲームのうち,文章が全画面に表示されるものをいう。
 ノベル的要素が重んじられているため,文章による叙述を画像と音楽によって写実的に再現する傾向がある。そのため,テキストの文体は,センテンスの長い段落文体に近く,基本的に文章単体でも内容が理解できるものでなければならない。また,センテンスの文字数に制限が少ないため,小説のような文章を自由奔放に書き下ろすことができる。
 文章と画像が重複的に表示されるため,テキストとキャラクターの双方に満遍なくプレイヤーの注意を向けることができ,制作者の意図した通りの表現がプレイヤーに伝わりやすい。他方で,特にキャラクターの立ち絵が文章に覆い隠されることがあるため,立ち絵の表情変化のタイミング等,画面効果の使用頻度・方法には,恋愛ADVに比べると制約が多い。
テキストとキャラクターの双方に満遍なくプレイヤーの注意を向ける例/「月姫」(C)TYPE-MOONより また,恋愛ADVに比べると,視覚や聴覚といった感性よりも,プレイヤーの文章読解力という理性に対して訴えかける効果の方が大きい。テキストを積極的に読ませることに主体が置かれる帰結として,やがては画面演出の付加されたリッチな小説を志向するものと思われる。
 ビジュアルノベル形式を採用した主な作品としては,「雫」(1996年,Leaf),「痕」(1996年,Leaf),「To Heart」(1997年,Leaf),「加奈〜いもうと〜」(1999年,D.O.),「月姫」(2000年,TYPE-MOON),「Fate/stay night」(2004年,TYPE-MOON),「ひぐらしのなく頃に」(2002-2006年,07th Expansion)が挙げられる。
 

恋愛ADV(恋愛アドベンチャーゲーム)とは

台詞がないタイミングでの表情変化=沈黙したまま少しだけ笑ってくれるヒロインCGの例/「ONE〜輝く季節へ〜」(C)NEXTON/Tacticsより/【茜】「……」 後者の<恋愛ADV>とは,ノベルゲームのうち,文章が画面下部に数行だけ表示されるものをいう。
 ビジュアル的要素とサウンド的要素が重んじられているため,文章による叙述を画像と音楽によって補完的に表現する傾向がある。そのため,テキストの文体は,センテンスの短い改行文体に近く,基本的に文章単体で内容が理解できるものでなくても構わない。また,センテンスの文字数が制限されるものの,会話等をテンポ良く描写することができる。
 画像が画面上部に,文章が画面下部に,それぞれ分割的に表示されるため,立ち絵の表情変化のタイミング等,画面効果の使用頻度・方法には,ビジュアルノベルに比べると制約が少なく,臨場感や微妙なニュアンスのある演出*3 *4で強みを発揮する。他方で,テキストとキャラクターに対するプレイヤーの注意が拡散し,制作者の意図した表現をプレイヤーが見落とすおそれがある。
 また,ビジュアルノベルに比べると,文章読解力という理性よりも,プレイヤーの視覚や聴覚といった感性に対して訴えかける効果の方が大きい。ビジュアルやサウンドが増強されていく帰結として,やがては字幕演出の付加されたアニメーションを志向するものと思われる。
台詞のニュアンスを表情で伝える=涙を浮かべながら語りかけるヒロインCGの例/「シンフォニック=レイン」(C)工画堂スタジオより/【アル】「だから行きましょう。そして話しましょう。手紙では伝えられなかったことを。そして――これからのことを」 恋愛ADV形式を採用した主な作品としては,「同級生」(1992年,エルフ) *5「同級生2」(1995年,エルフ) *6,「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」(1996年,エルフ),「ONE〜輝く季節へ〜」(1998年,Tactics),「Kanon」(1999年,Key),「AIR」(2000年,Key),「君が望む永遠」(2001年,アージュ),「家族計画」(2001年,D.O.),「うたわれるもの」(2002年,Leaf) *7,「CROSS†CHANNEL」(2003年,FlyingShine),「CLANNAD」(2004年,Key),「シンフォニック=レイン」(2004年,工画堂スタジオ) *8が挙げられる。(文責:ぴ)
 
/* 今後の課題:“<マルチシナリオ構造>と<一人称文体>の融合”に美少女ゲームの表現技法上の特色を見出す端緒として、本定義を活用する */
 
/* このURLでは一部、AQUAPLUS/Leaf製品の画像素材を加工・引用しています。また、これらの素材を他へ転載することを禁じます。 */
/* このURLでは一部、TYPE-MOON製品の画像素材を加工・引用しています。画像の権利はTYPE-MOONにあります。 */
/* このURLでは一部、NEXTON/Tactics製品の画像素材を加工・引用しています。また、これらの素材を他へ転載することを禁じます。 */
/* このURLでは一部、工画堂スタジオ製品の画像素材を加工・引用しています。また、これらの素材を他へ転載することを禁じます。 */

*1:正確には,音楽と音声とを併せて「音」と端的に呼ぶべきだが,便宜上,「音声」という用語を用いることにする。

*2:正確には、単なる<ADV>と表記するべきだが,<美少女ゲーム>の範疇にあることを踏まえ,便宜上,<恋愛ADV>と表記しておく。

*3:たとえば,台詞がないタイミングでの表情変化や,台詞のニュアンスを表情で伝えること,が挙げられる。

*4:当時のリアルタイム・プレイヤーの興奮については、たとえば次のように語り継がれている。「里村茜の場合だと、一緒にお弁当を食べるシーンがあって、三回目ぐらいでようやく少しだけ笑ってくれる。むっつりしていた口許が心持ち上がるだけなんですが、感動のあまりガッツポーズした記憶があります。まさに、ドット単位で変わった表情に狂喜乱舞した。」,東浩紀佐藤心更科修一郎元長柾木「共同討議 どうか、幸せな記憶を。 美少女ゲーム運動1996-2004」(2004年,波状言論臨時増刊号『美少女ゲームの臨界点』92頁)より。

*5:厳密には,恋愛SLGに相当するが,便宜上,ここに収録する。

*6:厳密には,恋愛SLGに相当するが,便宜上,ここに収録する。

*7:厳密には,ADV+SLGRPGに相当するが,便宜上,ここに収録する。

*8:厳密には,恋愛ADV+ミュージックADVに相当するが,便宜上,ここに収録する。