新堂 冬樹『毒蟲VS溝鼠』

毒蟲vs.溝鼠

毒蟲vs.溝鼠

あれから二年。宝田組、そして源治との死闘を制した溝鼠こと鷹場英一が再びこの世界に戻ってきた。


キター!!!キタよ私の大好きな新堂が!!!!!
余りにもナイスな装丁なもんで本屋さんでレジに出すのが恥ずかしかった。めちゃくちゃ恥ずかしかった。でもオンライン書店に逃げずに本屋さんの可愛いお姉さんから堂々と買う。これぞ男気。
ひっさびさに全編グロ!登場人物は変態オンパレード!残虐行為は過去最高かもしれません。はっきり言ってストーリーはあってないようなもんなんだけど、そんなものは端から求めてないのだ。この人物造詣と暴力描写は新堂しか書けないって。表紙を捲った裏にある“本書を彩る変な登場人物”を読んだだけでニヤニヤ笑いが止まらなかった。やはり私はこういう新堂が好きなんだと再確認。通称・毒蟲こと大黒(別れさせ屋)と通称・溝鼠こと鷹場(復讐代行屋)がお互の部下を含めた団体戦で戦うのですが、毒蟲の部下・鉄吉と溝鼠の部下・国光が最高なのです。方やコンプレックスの塊の斑禿チビデブ小卒男、方やマルキ・ド・サドをこよなく愛する真性サディストな河童禿小男で、この二人の言い合いは世紀の一戦と言っても過言ではないです。狂人VS変人、落伍者VS破滅者、ダニVSシラミ、ヘドロVS溝水(本文より)ですよ。これぞガチンコですよ。電車の中で読んでて肩ぶるぶる震えましたもん。このバカさ加減はほんと新堂しか書けません。何の罪もない動物が無意味に残酷なことをされていて、そこは目を背けたくなりましたが、これを書くにあたって新堂先生自らが鬼になる必要があり、動物ダイスキ!な新堂先生としてはあえてそういう描写を入れたのだろうと思う。そう心では泣きながら・・・(新堂風味)。
同じ変態残酷人間でも、無間地獄やカリスマに登場する人物達と比べて、この中にいる変態たちには全く愛を感じることができない。セコくて駄目でどうしようもない人間ばかりなのにその背後には人間の悲哀を感じることができて、だからこそ愛すべき人物達なのだけれど、これには愛を感じる余地が全くない。でも冒頭の著者から鷹場に送る言葉を読めば、それが意図してのことだと分かる。最近の作風を思うと、こっち側を書こうとするとここまで極端なものにならざるを得ないのかな・・・という気がしなくもないですが、きっとこの作品はリハビリなんだ。またこっち側で傑作を生み出すためのリハビリなのだ。すっかりあっち側に行ってしまったと思っていた新堂先生の中で、まだこっち側の魂が枯れてないことが分かって嬉しいです。はい大げさー。