4月30日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 刑訴法〈4〉
A女から、「強姦を受けた」という110番通報があり、B警部補らは4人で現場に向かった。同女から、犯人の人相、着衣を聞いて現場付近を検索中、発生から40分後、C巡査部長が人相着衣の酷似した甲を現場から500メートル先で発見した。甲は何も言わないので、B警部補は、直ちに現場へA女を連れて行き、確認させたところ「この男に間違いありません」と申し立てた。男をさらに追及したところ、事実を自供した。
この場合の逮捕はどうなるか、理由を付して述べなさい。
答案構成例
1.現行犯逮捕
2.準現行犯逮捕
3.緊急逮捕
4.事例の検討

1.現行犯逮捕
(1)意義
→現行犯逮捕とは、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者(現行犯人)を、令状なしに逮捕することをいう
(2)要件
(ア)「犯罪の現行性・時間的接着性」
→時間の経過・場所的移動によって、犯人特定の明白性は希薄化する
→具体的には、時間的に30〜40分以内、場所的には200〜300メートル以内が適法とされることが多い
(イ)「犯罪と犯人の明白性」
→逮捕者自身が直接覚知し得るものでなければならない
2.準現行犯逮捕
(1)意義
→準現行犯逮捕とは、刑訴法212条2項各号のいずれかに該当し、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる者(現行犯人とみなされる)を、令状なしに逮捕することをいう
(2)一般的要件(罪を行い終わってから間がないと明らかに認められること)
→「現に罪を行い終わった」(現行犯逮捕の場合)よりも時間的接着性が緩和された概念
→時間的には3〜4時間以内、場所的には数キロ以内(徒歩・自動車といった移動手段によって異なる)
(3)個別的要件
(ア)犯人として追呼されているとき(1号)
(イ)贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる凶器その他の物を所持しているとき(2号)
(ウ)身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき(3号)
(エ)誰何されて逃走しようとするとき(4号)
のいずれかに該当しなければならない
3.緊急逮捕
要件
→(ア)死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること
→(イ)急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
4.事例の検討
(1)現行犯逮捕
→警察官は犯行から40分後に500メートル離れた場所で甲を発見しているから、「犯罪の現行性・時間的接着性」は認められない
→警察官は甲の犯行を直接覚知していないので「犯罪と犯人の明白性」も認められない
→したがって、甲を現行犯逮捕することはできない
(2)準現行犯逮捕
→甲は犯行から40分後に発見され、被害者の確認、甲の自供もあることから、準現行犯逮捕の一般的要件を満たしている
→人相・着衣が甲に酷似していることは個別的要件のいずれにも該当しない
→したがって、甲を準現行犯逮捕することはできない
(3)緊急逮捕
→甲が犯したのは3年以上の有期懲役の強姦罪であり、自供や被害者の確認もあるから嫌疑は充分である
→逃亡や罪証隠滅のおそれも認められる
→したがって、緊急逮捕の要件を満たしている
(4)結論
→甲を緊急逮捕すべきである

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刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)

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目で見る刑事訴訟法教材 第2版

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