サイト連載「本屋」「北京」更新、ほか。

mizunowa2013-10-23


画像。阪急春日野道駅。2年前に撮影。



以下、ほんぢつ付 周防大島・猫庵便り vol.15


各位

海文堂書店の「奥の院」こと平野さんから、海文堂閉店前後にかかわってのおげんこが届きました(みずのわ放送局連載「神戸・本屋漂流記」第36回 http://mizunowa.com/soushin/honya.html)。

零細ではありますが、私もまた経営者の一人です。経営者としては、本屋が仮に黒字であったとしても閉めるときは閉める。斜陽産業、儲からない本屋を続けるよりは、ドラッグストアに店貸ししたほうがマシやと。それはそれで理解できます。
ではありますが、本屋という仕事の責任から考えれば、それでよしとできるものではないと、私は考えます。儲けが出な続けられん。けど、それでも粘り強く続けなアカン仕事もある。
それともう一つ。働き場が無くなる。労働者のクビが飛ぶという問題。文化云々も大事ですが、それよりもっと大事なのが雇用の問題だと私は考えます。「食う寝る出す」のままならぬ状況、再生産のできぬ状況では、何も始まりません。海文堂の閉店について伝える新聞記事にも、ネットの記事にも、残念ながら、私の知る限りでは、そこのところの言及はまったく見られませんでした。

【追記 10月23日12じ30分】
働かせ方や再就職の問題について、島田誠氏(元・海文堂書店社長/現・ギャラリー島田社長)が、ギャラリー島田のメルマガで書いてはりました。それを失念しておりました。また、島田さんが社長を務めていたころはよその書店から転職してきた人らを社員として雇ったそうです。働き続けられる環境と待遇を考えてのこと。ですが、島田さんの退職以降に入った人たちはアルバイト扱いになっていました。スタッフ全員の再就職やら何やら、立場上直接にはかかわれないけど、やれることはやらなアカン旨、閉店が発表された直後に島田さんから電話でお聞きしたことがあります。
送信したあとで思い出しました。追記にて、お詫び申し上げます。


働くという問題・働かせ方という問題・使い捨てよろしく簡単にクビを切るという問題に対して、世間全体の認識があまりにも軽くなりすぎとるのではないかと、どうも、そう思えてなりませぬ。ちなみに、2007年の書肆アクセス閉店に際してネット上や新聞雑誌業界紙の記事で、このことにきちんとした見識をもって言及していたのは、私の知る限り、遠藤哲夫氏だけでした。
目先の利便とか安価とかいったものに安易に流れていくことが、ぐるっと廻り廻って自分たちの社会を住みにくいものにしてしまう。働き場がなくなっていくのも、そのなかの一つであり、9月4日付の拙文(http://d.hatena.ne.jp/mizunowa/20130904)で云いたかったことは、煎じ詰めればそこのところの問題意識です。
現実には、いい読み手ほど、ネットとはつながっていない。本屋がしっかりしてへんことには、そういう人に本が繋がっていきません。それが年々駄目になっていきます。人口のみならず、知も財も首都圏に偏在しています。首都圏に本拠を置く版元であれば大手も零細もまだ続けていけるだけの背景はあるでしょうが、地方ではもうしんどいなというのが実感です。
先日、取次の担当さんと話をしました。……海文堂にせよコーベブックスにせよ、まともな本屋ほどツブれる。地方にはろくな書店が残っていない。地方の読者にとってネット書店は重宝であり、それは都市部の読者にとっても変わらず、そうなればなるほど書店はツブれていくけど、ここまで来てしまえばもう止めることはできない。日本社会の劣化を反映して本の読み手は減る一方であり、出版業界は縮小を甘んじて受け入れるしかない。商業としての出版はこれから先は成り立たない。……そういった結論でした。

あと20年はと何処ぞで書きましたが、現実には難しいかもしれません。最低あと10年もたせることを考えます。「忘れられた日本人」を書いたおっさんの本を作っとる版元が、ツブれてもおらんのに既に「忘れられた版元」になってしもうとるわけですから、そこを何とかせなアカンのかもしれません。ただね……ウチの本、何を出しても、殆ど何処もとりあげてくれへんのですよ。何でか知らんけど。

8月末完結予定で進めておりました「宮本常一離島論集」の編集進行が、またまた遅れています。今月12日、予定より2ヶ月半遅れで第3巻「利尻島見聞/離島振興の諸問題」を仕上げました。最終となる第4巻「馬毛島・青ガ島のその後/離島と観光の問題」は11月15日頃出来予定です。これをもちまして、全巻(5巻+別巻)完結となります。編者より原稿をお預かりしてから足かけ12年を要しました。目下、最終の索引チェックにとりかかっております。これが片付くまでは、他の仕事が動かせません。また、注文品の発送が遅れがちにもなっています。関係各位にはご迷惑をおかけしますが、ご了承のほど、何卒よろしくお願いいたします。

以下、サイト更新と新刊のご案内です。


みずのわ放送局連載「神戸・本屋漂流記」第36回「海文堂書店のあゆみ 2011年9月から閉店まで」平野義昌(海文堂書店
http://mizunowa.com/soushin/honya.html


みずのわ放送局連載「北京20年」第24回「陝北游記(2)」
山田晃三(北京在住日本人)
http://mizunowa.com/soushin/peking.html


利尻島見聞/離島振興の諸問題 宮本常一離島論集第3巻」出来
http://mizunowa.com/book/book-shousai/ritou3.html

馬毛島・青ガ島のその後/離島と観光の問題 宮本常一離島論集第4巻」11月15日頃出来予定
http://mizunowa.com/book/book-shousai/ritou4.html

宮本常一離島論集」全巻案内
http://mizunowa.com/book/genre/miyamoto-ritou.html


以下、既刊。


那須圭子写真・文「My Private Fukushima 報道写真家福島菊次郎とゆく」
http://mizunowa.com/book/book-shousai/fukushima.html


「神戸市戦災焼失区域図復刻版」
http://mizunowa.com/book/book-shousai/kobe-map.html


正本眞理子・文 金山一宏・写真「里山 いのちの譜――中国山地の暮らしを訪ねて」
http://mizunowa.com/book/book-shousai/satoyama.html


江里健輔「長寿社会を生きぬくために――医療と健康をめぐる66講」
http://mizunowa.com/book/book-shousai/choju.html

山本善行「定本 古本泣き笑い日記」
http://mizunowa.com/book/book-shousai/nakiwarai.html


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