mmpoloの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-12-05

[]ギャラリー川船の正札市



 年末恒例ギャラリー川船の「歳末正札市」が始まった(12月10日まで)。およそ150点の近現代絵画が並べられている。川船は銀座京橋地区の画廊では広い方だが、その広い画廊の壁面いっぱいに展示されている。主要な作品画像とリストはホームページで見られるという。

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 ざっと見てきたが、中村正義の岩彩が40万円、小山田二郎は5点ほどあって12万から28万円、中村直人のガッシュが22万円、長谷川利行が35万と55万と150万円、吉仲太造がミクストメディアシルクスクリーンの2点、井上長三郎の水彩が2.2万円で安い! 脇田和は6Fの油彩が45万円、難波田史男も45万円、麻生三郎の油彩F4はさすがに58万円、山下菊二のエッチングが10万円、ほかに野田弘志エッチングや寺田政明のコンテ、猪熊弦一郎デッサンもあった。安いものでは8千円からあった。

 いずれも格安であることは間違いない。東京スクエアガーデンの向って左横路地を進み、加島美術の横の階段を地下へ降りれば、たとえ見るだけでも無口な画廊主が歓迎してくれるだろう。150点の近現代絵画を堪能されたい。

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「歳末正札市」

2016年12月5日(月)〜12月10日(土)

11:00〜19:00(会期中無休)

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ギャラリー川船

東京都中央区京橋3-3-4 フジビルB1F

電話03-3245-8600

http://www.kawafune.jp/

2016-12-04

[]仏国務院副院長が語る憲法



 フランス国務院副院長ジャンマルク・ソヴェが憲法について語っている(朝日新聞、12月2日付け「オピニオン&フォーラム「憲法の価値を守るもの」)。

 フランスの国務院の役割は、政府提案法律が憲法や国際条約に照らして適当か否かを答申したり、行政裁判の最高裁として判決を下したりすることです。(中略)

 国務院は行政の一部ですが、意見や決定は政府や議会から独立しています。さらに重要なのが世論からも独立していること。国務院の決定文書の冒頭は常に「フランス人民(国民)の名において」と書かれていますが、私たちが言う「人民」とは世論ではない。えてして世論は市民の自由の制限をもたらします。世論の熱狂や激情にくみしてはならない。私達は散々痛手を被ったはずです。

 「えてして世論は市民の自由の制限をもたらします。世論の熱狂や激情にくみしてはならない」。日露戦争直後の暴動「日比谷焼討事件」を連想した。

 また白波瀬佐和子『生き方の不平等』(岩波新書)の一節も。それは、

……人びとの意識をもって政策目標とするのは危険です。なぜなら、人びとの意識の背景にある制度や構造のメカニズムを明らかにせずに、なぜ人びとがその意識を持っているかを明らかにすることはできないからです。政策対象としてまず着目すべきところは人びとの意識ではなく、その背景、あるいはその基層にある諸制度であり、構造でなくてはならないのです。(p.133)

 さらにリュシアン・ゴルドマンの「可能意識」も参考になるだろう。

2016-12-03

[]ギャラリーtの齊藤寛之個展「夢から覚める玩具」を見る



 東京台東区浅草橋ギャラリーtで齊藤寛之個展「夢から覚める玩具」が開かれている(12月17日まで)。齊藤は1973年東京生まれ。1998年東京藝術大学美術学部彫刻家を卒業し、2000年に同大学大学院美術研究彫刻専攻を修了している。1999年にフタバ画廊で初個展、その後巷房などで個展を行っている。

 画廊ホームページから、

本展では、日本の大工道具である鉋(かんな)の持ち手の木部に最小の彫刻を施し、船や飛行機などといった乗り物の玩具に見立てた、新作《Rocking Plane》を約250点陳列します。鉋の底部は、削られ丸みをおび揺り籠のように揺れ、不安定な現代社会を表現しています。また、鋭く光る金色の真鍮の刃は、日常の遊びの中に潜む痛みや傷を想起させます。見慣れた様相とは異なる、不均衡に変容した玩具の群像を是非この機会にご覧ください。

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 それにしても250点も展示するというのは相当な数だ。一つ一つを見せるというよりも作品の集合を見せるような印象だ。既製品を作品だとして提示するのがデュシャンが始めたレディーメイドなら、このように実用品に見えてそれが作品だというのは何と言うのだろう。いや、カンナに見えて底が舟形になっているなんて少しも実用的なんかじゃない。玩具という所以か。

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齊藤寛之個展「夢から覚める玩具」

2016年11月18日(金)―12月17日(土)

11:00―19:00(日・月曜日休廊、11/23開廊、12/3閉廊)

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ギャラリーt

東京都台東区柳橋1-9-11

電話03-3862-8549

http://www.toho-beads.co.jp/tbs/index.html

JR総武線浅草橋駅東口および都営地下鉄浅草線浅草橋駅A1より徒歩5分

2016-12-02

[][]山本弘の作品解説(54)「河童



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 山本弘河童」、油彩、F6号(41.0cm×24.2cm)

 制作年不詳(おそらく1978年)、晩年に何作か見られるエアブラシのような技法を使っている。しかしエアブラシを購入する経済的ゆとりはなかったし、仮に入手したとしても半身不随の手でそれが扱えたとは思えない。先だってのK'sギャラリーの個展でも同じような技法が使われていて、見てくれた画家の方から、布なんかで拭いたのかもしれないと言われた。おそらく『芸術新潮』などを見て、自分で工夫したのだろう。裏面に河童と書かれているので河童なのだろうが、子供を描いたようにも見える。

 画題の河童は得意な絵柄だった。色紙にしばしば河童を描いて妻の愛子さんや愛子さんのおじいちゃんが売り歩いていた。飯田市では山本は洋画家というよりも色紙に河童を描く「河童の弘さん」で通っていた。巧い絵でその名に恥じない出来映えだった。

 さすがに油彩画では色紙に描いたような作風とは一変し、優れた作品になっている。来年1月に新宿区四谷三丁目にあるギャラリーTS4312での個展に出品する予定。

2016-12-01

[]カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』を読む



 イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』(白水社uブックス)を読む。とても奇妙な小説。冒頭「あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている。さあ、くつろいで、精神を集中して。余計な考えはすっかり遠ざけて」。と始まる。次の章で「冬の夜ひとりの旅人が」が始まるが、20ぺージ足らずで唐突に中断する。そして新しい章が起こされ「あなたはもう30頁ほど読み進み、成り行きに夢中になりつつある」と続いている。ところが読んでいた本は落丁だった。翌日本屋へ行って抗議すると、本屋は出版社からの通知がきているという。それによると『冬の夜ひとりの旅人が』の一部に製本上のミスがあり、ポーランド人の小説『マルボルクの村の外へ』と混合していたという。「あなた」はそのポーランド人の小説が読みたいという。次の章が、その『マルボルクの村の外へ』なのだ。

 『マルボルクの村の外へ』を読み始めると、また10ぺージほど読んだところで中断する。「あなた」は混乱する。このように次々に10篇の小説の初めの部分が紹介されては中断を繰り返す。そのことが作中人物によっても語られている。

「(……)夢中になりかけたところで読書が中断されるはめになるんです。その続きを読みたくてたまらないのですが、その読み始めた本の続きだと思って開けてみると、それがまた全然別の本なんです。」

 最後までこんな調子で進んで、この謎が解決するわけでもない。途方に暮れたような状態で読書を終えることになる。

 不思議な小説だった。