mmpoloの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-07-26

[]ギャラリーf分の1の笹井祐子展を見る



 東京お茶の水ギャラリーf分の1で笹井祐子展が開かれている(7月29日まで)。笹井は1966年生まれ、日大芸術学部研究所版画コースを卒業している。最初の個展は1989年にJCBギャラリーで、次いで1991年ギャラリー21+葉で行っている。

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 笹井は元来版画家だが、今回ドローイングや立体(ブロンズ)まで出品している。そのどれもが悪くない。ブロンズは5cmほどの小品だが、堂々とした作品だ。柳原義達のカラスを連想したが鶏だとのこと。

 だが今回の目玉はメキシコ産のアマテ紙という特殊な紙に和紙を貼り、凸版とパステルを重ねた作品だ。アマテ紙はもともと穴が開いていて結構厚くインクが裏面にまで通らない。したがって表裏に別々のイメージが描かれている。そんなわけで壁面に展示するのではなく天井から吊って両面を見せている。

 また小品ながら2点展示されているドライポイントも良い。そしてモデルを使ったドローイングがさらに魅力的なのだ。聞けば、ドライポイントもドローイングもすごくたくさん制作してあるとのこと。それぞれに特化した個展を見せてもらいたいと思うのは私だけではないだろう。

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笹井祐子展

2017年7月19日(水)〜7月29日(土)月曜休廊

11:00−18:30(日曜・最終日は17:00まで)

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ギャラリーf分の1

東京都千代田区神田駿河台1-5-6 コトー駿河台

電話03-3293-8756

http://www.galleryf-1.net

2017-07-25

[]ギャラリーQの高嶋英男展を見る



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 月曜日から「画廊からの発言−新世代への視点2017」が始まった(8月5日まで)。ギャラリーQでは高嶋英男を取り上げている。高嶋は1989年東京都生まれ。2012年に多摩美術大学大学院美術研究科博士課程前期課程工芸専攻を修了した後、2014年東京芸術大学大学院美術研究科彫塑専攻を修了している。2012年にKoki Artsで初個展、2017年にも同じ画廊で個展を開いている。グループ展は多数参加しているが、私は2015年ギャラリーマルヒの「空壺の人」を見て、ブログに紹介した。

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 高嶋は陶で原寸大の人間を作っているが、その顔には大きな空洞が口を開けていて不思議な形になっている。今回も大きな作品が1点と小品がたくさん展示されている。どれもユニークでとても面白い。一度見たら忘れられないだろう。ぜひギャラリーQへ足を運ぶことをお勧めする。


ギャラリーマルヒの高嶋英男個展

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高嶋英男展

2017年7月24日(月)―8月5日(土)

11:00−19:00、日曜・祝日休廊

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ギャラリーQ

東京都中央区銀座1-14-2 楠本第17ビル3F

電話03-3535-2524

http://www.galleryq.info

2017-07-24

[]ギャラリー川船の山本麻世展「川底でひるね」を見る



 今日から「画廊からの発言−新世代への視点2017」が始まった(8月5日まで)。ギャラリー川船では山本麻世を取り上げている。山本は1980年東京都生まれ、2005年に多摩美術大学大学院美術研究科工芸専攻陶コース博士前期課程を修了している。ついで2008年にオランダアムステルダムの美術学校の陶芸学科を卒業し、2009年にはアムステルダムの別の美術学校のファインアート学科を中退している。その後オランダ韓国に滞在して制作し、内外のアートフェアに参加しているが、多く野外展示とのこと。ギャラリーでの個展は今回が初めてらしい。

 まずメイン展示は赤白の工事用テープと針金で編んだ大きな立体作品。バックの額に入った絵画ギャラリー川船が所蔵する近代絵画。山本はふだん屋外で展示していたが、とくに環境を生かして制作展示してきた。ギャラリーでの今回の展示も、純粋なホワイトキューブではなく、画廊に展示されている絵画をある種の環境とみなして制作した。蛇のような造形が画廊の壁面を覆っている。

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 また画廊で使われている釘に絵を吊り下げるための白い紐を編んだ作品。地方のお店でも入手できる安価な床材で制作した作品。額の装飾の隙間に女性の髪留めを挟み込んだ作品など、ほかでは見たことがない作品を並べている。

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 山本は多摩美でもオランダの最初の美大でも陶の作品を作っていたらしい。その後ファインアートを学び直したのだろうか。そのように一筋に学んできたのではなく、最初に陶を徹底的に学んだのちファインアートに転じたことが山本の制作に豊かな結果をもたらしているように思う。

 変わったタイトル「川底でひるね」について山本は書く。

このギャラリーはかつて川だったかもしれない。

たぶん違うのだろうけど。

江戸時代、ギャラリーの裏にある高速道路の下は皇居の堀から墨田川をつなぐ人工の川だった。

もし、この場所もかつては川だったとしたら、今私たちがいる場所は人口の石垣に囲まれた川底だ。(後略)

 久しぶりに面白い展示を見た気がする。柱に巻かれた白い紐の作品の向こうに写っている女性が作家の山本麻世。

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山本麻世展「川底でひるね」

2017年7月24日(月)―8月5日(土)

11:00−19:00、日曜・祝日休廊

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ギャラリー川船

東京都中央区京橋3-3-4 フジビルB1F

電話03-3245-8600

http://www.kawafune.jp/

2017-07-23

[]明日から「画廊からの発言−新世代への視点2017」が始まる



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 明日から始まる「画廊からの発言−新世代への視点2017」は、恒例の10軒の画廊が推薦する40歳以下の若手作家10人の個展だ。現代美術の代表的な貸画廊が選んだ作家たちだから見逃せない重要な企画で、7月24日から2週間開かれる(8月5日まで)。

 10の画廊とそれぞれ取り上げている作家は次のとおり。



ギャラリーなつか:原 汐莉

http://gnatsuka.com/


・コバヤシ画廊:幸田千依

http://www.gallerykobayashi.jp/


・ギャラリイK:西村 卓

http://galleryk.la.coocan.jp/


・ギャルリー東京ユマニテ:小松崎晃

http://g-tokyohumanite.jp/


・藍画廊:中野由紀子

http://igallery.sakura.ne.jp/


ギャラリーQ:高嶋英男

http://www.galleryq.info/


ギャラリー58:水上 綾

http://www.gallery-58.com/


・ガルリSOL:槙野さやか

http://www005.upp.so-net.ne.jp/SOL/


ギャラリー川船:山本麻世

http://www.kawafune.jp/


・gallery21yo-j:庄司朝美

http://gallery21yo-j.com

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画廊からの発言−新世代への視点2017」

2017年7月24日(月)−8月5日(土)

11:30−19:00(最終日17:00)全画廊日曜休廊

※gallery21yo-j〔自由が丘〕のみ会期・時間が異なる

2017年7月25日(火)−8月5日(土)

13:00ー18:00(最終日18:00まで)

2017-07-21

[]ジャコメッティエクリ』を読んで


 ジャコメッティエクリ』(みすず書房)を読む。ジャコメッティが書いた文章を集めたもので、雑誌等に発表したものから、メモ、断章、そして対談を収めている。全部で450ページもあるが、メモ、断章が200ページ近くを占めている。既発表の文章からこのメモ、断章までが80%を占めている。ジャコメッティは造形芸術の人で、文章の人ではないことがよくわかる。で、この80%はジャコメッティのディープなファン以外あまり楽しめないだろう。

 それ以外の対談(対話)が面白かった。矢内原伊作との対話も12ページほどだが収められている。なかでも特にアンドレ・パリノとの対話が興味を引いた。そこから引用する。

パリノ――現在のあなたにとって絵を描き彫刻をする冒険とはどういうことなのでしょうか。

ジャコメッティ――世界を見ること、理解すること、世界を強烈に感じ、われわれの探検の能力を最大限に拡張することだ。しかし絵画を三つの斑点(ターシュ)に縮約してしまうと、世界の理解は非常に狭くなってしまう。ほとんどあらゆる絵画において――これは最近大いに感じていることだが――抽象絵画であれ、タシスムであれ、非定形絵画アンフォルメル)であれ、実際にはヴィジョンというものはとりわけ色彩に関連するだけに一層そうなのだ。ところで色彩のヴィジョンというものは印象派がもたらしたものと今もってほとんど変らない。だから、世界の見方という点ではわれわれはさして進歩していないということができる。キュビスムは或る期間幻想を与えたが、キュビスムは結局印象派そのものと非常に近いヴィジョンに帰ったということにだれもが気づいている……そんなわけで、いまでも印象派のヴィジョンが支配している。

パリノ――印象派のヴィジョンとキュビスムのヴィジョンは根本的に違うのではないでしょうか。

ジャコメッティ――キュビスムは最後には、すなわち芸術制作そのものを廃棄して貼り絵(パピエ・コレ)に終った。一つの椅子なり物なりをとらえて、それを提示すれば芸術作品になるというわけで、それは一挙に芸術作品を作ることをやめてしまった。つまり芸術作品は廃棄された。それゆえ起源に帰らなければならなかった。ところで《帰った》という語はすでに敗北したということだ。しかし、じっさいにはそれほど《帰った》というわけではない。

 このあたりきわめて大事なことが語られている。

 さて、つまらないと言った断章のなかで、個人的に面白かった部分を引く。

 夏の午後、涼しい木陰で頻繁にいっしょに、自慰行為に耽ったこともある。だが二人が同じ女の子のことを考えるのではまずかった。前もって同級生の女の子の誰のことを考えるか、決めた。ぼくらは9歳か10歳だった。多分もっと小さかったかもしれない。

 二つ驚いた。この年齢はいかにも早熟すぎるのではないか。スイス人は早いのだろうか。田舎の小学生だった私は12歳だったと思うし、おくてだったI君は高校に入ってからだと言っていた。もう一つ驚いたことは同級生の女の子のことを考えてしたという点だ。身近な誰かを考えるのは汚してしまっていけないことだと思っていたから。

 本書は1994年に初版が発行されている。国立新美術館でのジャコメッティ展に合わせたのか、新装版が今年の5月に発行された。