潜水艦もの特集

上に書いた「海底からの生還」が文庫化されたのは3月5日公開予定の映画「ローレライ」のおかげだろう。他にも早川が潜水艦の文庫本を並べている。でもこっちは別の映画「Uボート 最後の決断」にかこつけてということになっている。他社の企画に乗るには意地があるのか。
ところで以前、映画「アレキサンダー」の件で、「アレキサンダー史書」という検索がいっぱい来ていると書いたことがある。まあ普通、一般ピープルにとってアレキサンダーはなじみはない。そして今回の「ローレライ」は潜水艦、Uボートである。これまた一般ピープルになじみがない。だから「潜水艦 Uボート 本」という検索が殺到するに違いない。よって潜水艦もの本やDVDのネタをいまのうちに書いておけば、昨日書いたように「検索で飛んできた一見さんがAmazon行ってガッポガッポ」になるに違いない。日本を代表するアルファ級ブロガーがそう言っているのだから間違いないのである。
というわけで潜水艦ネタを少し並べてみる。

追記
かなり外人が書いたものにかたよっているなあ。反省。でも日本人が書いた戦記、特に軍人が書いた物は「他人にわかるように」書いてない物が多いのである。自分が何しましたという話ばかりなのだ。とにかく自分の身の回りのことしか書いてないのだ。そういう点であまりお勧めできない。


第二次大戦以前

Uボート〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

Uボート〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

Uボート〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

Uボート〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

基本である。
潜水艦映画のメートル原器といえる映画で、すべての潜水艦映画はこれを基準として語られる。



伊58潜帰投せり (学研M文庫)

伊58潜帰投せり (学研M文庫)

巡洋艦インディアナポリス撃沈 (ヴィレッジブックス)

巡洋艦インディアナポリス撃沈 (ヴィレッジブックス)

ローレライ」のバックグラウンド。テニアン島に原爆を輸送した米巡洋艦インディアナポリスは復路、日本の潜水艦伊58によって撃沈された。しかも同艦の任務は極秘であったため救助活動が遅れ、乗員1196人中、生存者は316人であった。この生存者の一人が出てくるのが「ジョーズ [DVD]」である。インディアナポリスの生存者は漂流中、鮫に襲われたのだ。
「伊58潜帰投せり」はこの伊58の艦長、橋本以行氏の手記。
巡洋艦インディアナポリス撃沈」はこの事件に取材したノンフィクションである。



深海の使者 (文春文庫)

深海の使者 (文春文庫)

第二次大戦中、ドイツはアメリカ、イギリス、ソビエト相手の戦争状態に陥り、そのため極東の同盟国日本との連絡路は陸路、海路、空路ともに全て閉ざされてしまった。そして唯一の連絡手段となったのが潜水艦である。しかし喜望峰経由で連合軍制圧下のインド洋、北大西洋を経てをドイツに向かうのは隠密行動を常とする潜水艦といえども極めて危険な任務であった。それを成し遂げた日本の潜水艦乗りの姿を描く長編ノンフィクション。

潜水艦戦争 1939‐1945〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

潜水艦戦争 1939‐1945〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

潜水艦戦争1939‐1945〈下〉 (ハヤカワ文庫NF)

潜水艦戦争1939‐1945〈下〉 (ハヤカワ文庫NF)

第二次大戦の大西洋、および太平洋の潜水艦の戦いを包括的に扱った戦記。著者レオンス・ペイヤールの本は他に「戦艦ティルピッツを撃沈せよ! (ハヤカワ文庫 NF 55)」がある。これには敵港湾に潜入して爆弾をしかけるために開発された特殊潜航艇が出てくる。

大西洋戦争 (欧州戦史シリーズ (Vol.6))

大西洋戦争 (欧州戦史シリーズ (Vol.6))

〈図説〉Uボート戦全史 (歴史群像シリーズ―欧州戦史シリーズ)

〈図説〉Uボート戦全史 (歴史群像シリーズ―欧州戦史シリーズ)

学研の歴史群像シリーズ。写真やイラストも豊富。ただAmazonでは少し待たされるので、大きな書店の戦史コーナーをあたったほうがよい。

潜水艦の死闘―彼らは海面下で戦った

潜水艦の死闘―彼らは海面下で戦った

第一次及び第二次世界大戦で活躍した潜水艦艦長17名の列伝。古い本なのでリアル書店には置いてないかも。

イギリス潜水艦隊の死闘〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

イギリス潜水艦隊の死闘〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

イギリス潜水艦隊の死闘〈下〉 (ハヤカワ文庫NF)

イギリス潜水艦隊の死闘〈下〉 (ハヤカワ文庫NF)

かなり密度の濃い潜水艦戦記。
第二次大戦中、北アフリカで勇名を馳せたのが、あの砂漠の狐エルウィン・ロンメル将軍である。だが彼が率いるドイツ・アフリカ軍団には重大なアキレス腱があった。補給である。北アフリカのドイツ、イタリア軍の補給は、イタリア本土と北アフリカチュニジアを結ぶ地中海上海上輸送に依存しており、この輸送路はマルタ島に配備されたイギリス軍によって度々脅かされた。そしてこの輸送路切断の主役となったのが、イギリス第10潜水戦隊、ファイテイング・テンである。
とても面白い本なのだが、欧州戦史のバックグラウンドがない人がいきなり読むと何がなんだかさっぱりわからないのが重大欠点。
上級者向け。

第二次大戦以後

敵対水域―ソ連原潜浮上せず (文春文庫)

敵対水域―ソ連原潜浮上せず (文春文庫)

名著。
冷戦中の1989年10月、北太平洋バミューダ沖を潜航中のソビエト弾道ミサイル搭載潜水艦K219で重大事故が発生、浸水と放射能漏れに見舞われた同艦は浮上を余儀なくされる。しかしそこはアメリカの裏庭、まさに敵対水域であった。
これもメートル原器で、現代の潜水艦の本はこの本を基準として語られる。

対潜海域―キューバ危機、幻の核戦争

対潜海域―キューバ危機、幻の核戦争

キューバ危機の秘話。
キューバへの核ミサイル配備という状況に直面したアメリカのケネディ政権は、キューバ海上封鎖を断行する(13デイズ ?コレクターズ・エディション? [DVD])。一方、ソビエトは核ミサイルをキューバに向けて運ぶ輸送船を支援すべく3隻のフォクストロット級潜水艦を派遣した。これらの潜水艦には核魚雷が搭載されていた。
「敵対水域」と同じ著者の本だが、いまいちほのぼのとして緊迫感にかける。

潜水艦諜報戦〈上〉 (新潮OH!文庫)

潜水艦諜報戦〈上〉 (新潮OH!文庫)

潜水艦諜報戦〈下〉 (新潮OH!文庫)

潜水艦諜報戦〈下〉 (新潮OH!文庫)

冷戦中の潜水艦による諜報活動を扱った本。
面白い本だが絶版なのが惜しまれる。

暗黒水域 知られざる原潜NR-1

暗黒水域 知られざる原潜NR-1

アメリカの原子力潜水艦隊の生みの親であり、また潜水艦隊の独裁者でもあったハイマン・リッコーバー提督。
その提督がみずからのアイデアを結実させたのが特殊潜水艦NR-1である。
原潜としては最小クラス、深度724メートルまで潜航可能、水中作業用マニュピレーター装備。しかも艦体に窓がついていて、船の底には車輪までついている。
この潜水艦の建造および運用の秘話も面白いが、それ以上に面白いのがリッコーバー提督の数々のエピソードである。