民家

ここ数日の「民」に関する話で忘れていたことが、建築史家、今和次郎による「民家」の発見。『日本の民家 (岩波文庫)』が出るのが1922年だから、柳田や柳とほぼ同時代である。
今が民家研究をはじめたきっかけとなった白茅会の面子が面白い。柳田国男内田魯庵、細川護立という多彩な人々に、さらには、木子幸三郎、大熊喜邦(泥絵に関する著作もある)といった建築家も参加している。日本の建築史、ヴィジュアル・カルチャー史を考えるうえで重要な団体だと思う。
で、「民家」概念自体、批判すべきところは多いのだけど、その一方で、彼によるドローイングの味がどうも好きでね。どうも批判しようにも矛先が鈍る。可愛くて。

これなんか、後の考現学採集(『考現学入門 (ちくま文庫)』)に明らかに繋がる。「武蔵西多摩郡の山人足の小屋」の内景。あとこれとか。
民家の障子の引手の採集。
今の面白いのは、ここから一気に都市に向かってしまうこと。ダダの連中と組んだ震災後のバラック装飾社から、考現学へ。都市と同時代に向かったことで、柳田に破門されたという伝説(事実はちょっと違うらしい)が納得できる。


今先生。一生、大学でもジャンパーにスニーカー(ズック靴ね)で、絶対ネクタイはしなかったらしい。晩年のエッセイ集『野暮天先生講義録』はすっごく面白い。また基本的にはドローイングの人だけど、ライカを持ってヨーロッパ旅行に行ったことはあって、そのときの絵葉書書簡集『絵葉書通信:欧州紳士淑女以外』もマスト。紳士淑女「以外」だもんな。
晩年の今先生。ええ感じやなぁ。憧れます。