(305)世界の官僚奉仕を求めて第15回官僚奉仕の切札は太陽(10)官僚奉仕を希求した官僚の遺言(私の見た動画7『核を求めた日本』)

上の私の見た動画7では、元外務事務次官村田良平が亡くなってから半年後2010年10月3日に放送されたNHKスペシャル・スクープドキュメント「核を求めた日本 〜被爆国の知られざる真実〜 」を村田良平の証言に絞って載せています。
村田良平氏の「核密約(60年の日米安保条約改定の際核兵器を搭載した米艦船の日本への寄港や領海通過を容認する条約)」公表(2009年)や、NHKのインタビューで68年当時日本が核保有を求めて西ドイツへの共同開発要請の証言は、私には戦後も国民無視の官僚支配が継続していることへの警鐘に見えました。
しかも亡くなる一ヶ月前のNHKインタビューでは、「永久にごまかし(核密約)がやみの中にきえちゃたと思いますよ」、「日本において核に関する真剣なまじめな、しかも実態の脅威を頭に入れた議論を巻き起こすべきなんです。日本の中で」、「どうすれば核があっても意味のない世界が作れるかという勉強は進まないままに来ちゃいましたよ、はっきり言って。要するにタブーだという現状が今日まで続いているんだと思いますよ」と述べています。
その言葉には、村田氏がドイツとの交渉、さらにはドイツ大使を歴任してドイツから学んだことが滲み出しているように思えました。
すなわちそれは、ドイツの官僚高官たちが「独自には決断できない」と述べるように、国民議論を最優先する官僚奉仕の民主国家への指向に他なりません。

しかしそのような指向は、村田氏の若人の遺言したと言われる著作『何処へ行くのか、この国は』には見られず、以下のような核保有を確信する著者の持論が語られています。

「私は、日本が英国あるいはフランスと類似の、潜水艦(核弾頭を備えたクルーズ・ミサイル)による極めて限られた事前の核抑止力を保有するのが正しい途であり、米国の核の傘への信頼は、最終的に北朝鮮の核の保有を暗黙のうちに認めたことによってすでに地に落ちている以上、独自の核抑止力を持つとの日本の要請を米国も拒否できない日が、それ程遠くない将来到達するかもしれないと思っている(220ページ)」

もっとも冒頭第一章で村田氏は、うやむやにされて来た戦争責任について述ており、(本来責任のある)各省の高官も一兵士より高い恩給を受けていることを批判し、過去の戦争の可能な限り客観的な事実の確定と経緯の分析を推し進め、責任を明らかにしていくことを訴えていました。
そうした視点で見れば、村田氏の胸中では官僚支配を正当化する思いと、責任の所在を明確にする官僚奉仕への思いの葛藤が垣間見られます。
そして亡くなる1ヶ月前のインタビューでは、持論である限定的核保有論さえ国民議論に委ね、官僚支配の専制国家からドイツのように官僚奉仕の民主国家への遺言が、私には聞こえて来ます。